ことばのビルディング  

ことばの基礎になるいろいろな力
「ことばが言える」能力は、このビルで言うと、最上階です。下の階(脳)の働きが整った上で発揮できます。

ビルを建てる時、最初に最上階を作ることはありません。まず土を深く掘り、土台をしっかり固め、地下、1階と建てていきます。

ことばも同じで、「ことばが遅い」・・「言語訓練」・・「絵カード」と考えがちですが、言える・言えないの見た目よりも子どもの中の本当のことばの力を育てましょう。

1・2階が「からだの脳(脳幹)」、3階が「こころの脳(大脳辺縁系)」、4階より上は「知力・ことばの脳(大脳皮質)」です。

色々な要素が出来てことばが出てくることが、このビルを見ていただくとお分かりになると思います。





●ことばの基礎になる、色々な力

十分に泣く、声を使い分ける。
聞こえの発達、声を聞き分ける。
大人と同じ気持ちを共有できる、同じものを見る
バブバブおしゃべり(喃語)
動作のまね、ことばのまね(模倣)
話し掛けられていることがわかる(言語理解)
手や指の動きが器用になる
指差し
やり取り遊び(役割の交代)
ゴニョゴニョおしゃべり
動作や表情で気持ちをあらわす(動作や表情による表現)

{お話するために必要な力}
耳がいい、色々な音に気づく(聴力)
⇒耳から入ってくる音や声が、ことばの「まなび」の源です。
こちらの言うことが、よくわかっている(言語理解)
⇒「理解する」ための脳の働きが整っている証拠です。
大人に相手にしてもらうのが好き、困ったことがあると、大人に頼る(対人関係)
⇒大人に頼る気持ちは、大人の真似をしたり、大人と同じも物を見る力につながります。これが、ことばの基礎になるからです。
よく声を出す(発声)
⇒「ことば」を言うには、声が上手に使えなければならないから。
まね(声だけでなく身振りの)をする(模倣)
⇒人への興味、まねことばの基礎だから。

●子どもが大きくなる道筋はみな共通
発達には順序があります。
からだの動きの発達はとてもわかりやすく、首がすわる⇒寝返り⇒お座り⇒はいはい⇒つかまり立ち⇒立つ⇒歩く、の順です。ことばもからだの発達と同じ様に、口の動かし方や、心の動き、考える力など、順序を追って発達していきます。

これを「脳の積み上げ構造」で説明します。
(右の絵を参照してください。)
1番下に「からだ」をつかさどる脳(脳幹)、2番目には「こころ」をつかさどる脳(大脳辺縁系)、1番上に乗る脳は「知力」や「ことば」をつかさどる脳です(大脳皮質)。
1番目が無いとその上は育ちません。

2歳から2歳半までは、まだ個人差があり、少しゆっくりさんもいます。1歳半健診で指摘され心配される方が多いようです。「標準」にはあまり神経質にならないでください。

しかし、注意深くかかわってあげないといけないお子さんは、
ひどく落ち着きがない。あちこち走りまわって、じっとしていない。
こちらの言っていることが通じていないようだ。なんだかボーッとしている感じ。
目が合わない。呼びかけても全然反応してくれない。ふりむかないだけでなく、動きが止まるようすもない。まったく「われ関せず」という感じ。
同じ遊び(クルクルまわす、ペラペラめくる、1列に並べる等)ばかりを3~4ヶ月も続けて、新しい遊びに誘っても、まったく興味を示さない。
一人だけで遊んでいる。一緒に遊ぼうとしても知らん顔をする。

このうち3~4個が当てはまると、注意深く接してあげる必要があります。

「病気」は診断がつかないと治療が始まりません。しかし発達につまずきのあるお子さんは、病名や診断名はつかなくても、対処が始められるのです。東洋医学(漢方薬などでの治療)は病名だけで薬を処方しません。同病異治、異病同治で、その子のからだ全体のアンバランスを治療することで病気を治すのです。また、医食同源といって食養生と日常生活の節制を大切にします。薬を飲んでいたら良いと言うものでなく、心がリラックスした生活や規則正しい生活のリズムが治療の基本になるのです。この東洋医学的処方と同じく、対処の方法は「生活」の中にあるのです。

お子さんとのお付き合いはまだたかだか2~3年です。お子さんのすべてをすぐに解決しようと急ぐ必要はありません。「ちゃんとしたおとな」になる20~30年後を見通して、遠くまでひとりで歩いていけるからだとこころの底力をつけてあげる時期が幼児期です。焦りは禁物です。

一直線の「訓練」は、あとになってみると、かえって害になることが多いものです。「ゆっくり芽を出せ、つきあってあげるよ。」そう、自分にも子どもにも言い聞かせて。遅いなら遅いなりの、でこぼこしているならでこぼこなりの、その子の歩みを理解しましょう。外野の声に惑わされず、子どもをやみくもに追い立てず、その子らしさを理解し、横に付き添って、子どもと一緒に道すがらを楽しみながら歩きましょう。それが親子としての人生を楽しむコツでもあり、大きくなったとき、その子らしさをいっぱいに開花させる秘訣でもあります。

今、育児で大変な時期の親御さん、しかしこのような時期は何歳も続くことはありません。子どもの育つ道筋は、「障害」があろうとなかろうと共通です。長い人生ではそのような時もありますが、ふと歩みを止めて道端の花に目をやりましょう。山歩きをしていて、一休み、そのとき登っているときには気づかない、野の花に汗を拭きながら目がいきます。「アーきれいだな」と感じます。立ち止まってみて気づく一瞬です。皆人の子です。そんなに違いがあるわけではないはずです。時には立ち止まり、心の中のダムの貯水量がいっぱいになり水があふれて、発電力がつけばまた歩きはじめましょう。ダムが枯れていては、お母さんが倒れます。ゆっくり、慌てず、マイペース(特にこどもの)そうすることで必ず未来は明るくなると信じています。

引用させていただいた図書
「健診とことばの相談」 中川信子著 ぶどう社
 
























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