作者:エル
私立佐奈山高校。
いわゆる上流家庭のお嬢様が通う名門女子高等学校である。
しかし、半年ほど前から不穏な噂が流れていた。
ざわざわざわ…
生徒A「あ〜ん、かったる〜い」
生徒B「次って歴史だよねえ」
生徒C「あ、杏子先生の授業じゃん!」
生徒A「杏子先生って面白いよね」
生徒B「ねー。この前の、お茶会実践なんか最高だったよ」
生徒C「若いし、ちょっとトロそうだけどさ。彼氏とかいるのかな?」
生徒D「……」
生徒D「(…ふぅ、杏子、早く来いよ。女はメンドくさいからなあ)」
がらがらがら…
杏子「え〜、では授業始めるから、席について」
杏子「(…う〜ん、席替えしたみたいね…)」
キョロキョロ…
杏子「(いたわ…一番後ろね…)」
杏子「(それにしても…)」
杏子「ぷっ…」
生徒A「杏子先生どうしたんですか? いきなり吹き出して」
杏子「えっ? あっ、な、何でもないわ」
杏子「(ぷぷぷっ…雄二君の女子高生姿のせいなんて言えないわ…)」
杏子「(な、何回見ても…ぷははっ!)」
雄二(生徒D)「(…杏子のヤツ! 後で覚えてろよ! 俺だって好きでこんな格好してんじゃないんだからな!)」
雄二「むすっ…」
杏子「え〜、では、授業をはじめます…(ぷくくっ)」
雄二「(くぅ!! 女装なんて二度としないからな!!)」
杏子「今日は、『本能寺の変と山崎合戦』ですね」
杏子「本能寺の変は、皆さんも知っていると思いますが、織田信長が明智光秀によって討たれた事件です」
さてと…雄二くんと情報交換しなきゃね…。
はい? 何の情報かですって?
ここの校長が公金横領の疑いがあるのよ。で、私が捜査に来たってわけ。
杏子「光秀は、信長を討つ前に歌会で、『時は今、雨がしたしる五月かな』という歌を歌っているのは有名で、これは土岐氏の末裔である光秀が、雨すなわち天を治る(しる)すなわち治めるという意味だといわれています」
あ、言っとくけど、私は今、内調は退職して、教育監査機構って所に勤めてるのよ。
雄二くんのことは知ってるでしょ?
雄二くんも成り行きで私のパートーナーってことになってるわ。
この佐奈山高校っていうのは女子高なものだから、生徒に変装している雄二くんも女生徒の格好なのよね。
ぷっ…それにしても、雄二くんの女装最高♪
杏子「しかし、最近の学説では、光秀は朝廷と通じ、逆賊信長を討ったのではないかといわれています。治るという言葉は、天皇が天下を治める時にだけ使われ…」
さてと、任務の説明はこのくらいのして、雄二くんと情報交換を始めるわね。
えっ? 授業中にどうやってそんなコトするのかですって?
フッフッフッフッフッフッフッフッフ……。
モールス信号って知ってる?
まぁ、簡単にいうと音の組み合わせで相手に意思を伝える信号ってトコかしらね。
ちょっと、やってみるわ。
トントント〜ン
雄二「(ん? 情報交換か)」
トトトントントトン
杏子「(返事が来たわ…。え〜と…)」
杏子「(…『黒板をチョークで叩くのは目立つぞ』…」
杏子「……」
杏子「(つ、続けるわよ)」
* | 本来のモールス信号の符号は、“ト”と“ツー”という2種類の長さを持つ音の組み合わせでできています。 そして、もっと複雑です。 |
杏子「(ていっ!!…『何か見つかった?』)」
トントントトント〜ントン
雄二「(へっ)」
雄二「(『波が来た?』)」
雄二「……(汗)」
雄二「(『波って何だよ?』)」
トントンカサカサ…ガリガリ…
杏子「!?」
杏子「(何か知らないけど、怒ってるわ…)」
杏子「波?」
生徒A「ナミ?」
生徒B「先生、ナミって何ですかぁ?」
雄二「ピクピク…」
杏子「えっ、あっ、はい。え〜と、秀吉の毛利との講和の速さはナミではなかったのよ!」
生徒A「あ、そうですね」
生徒B「納得納得♪」
ふぅ…思わず、口に出しちゃったわ…危ない危ない。
それにしても、波って? 何かしらね…。
杏子「(『波がどうしたのよ?』)」
杏子「え〜、何故か、明智光秀や織田の家臣達はこの間、動こうとしなかったのですね」
ガッガッガッガッガッガ!!
生徒たち「!?」
三日天下!!!
生徒たち「(すごく力込めて何を書く!?)」
雄二「(……チョークで信号送るなってば…)」
雄二「(『波がどうしたのよ?』って、こっちが聞きたいんだけど…)」
雄二「……」
雄二「(杏子の『波』は無視しよう…)」
雄二「(『そっちは、何か見つかったか?』)」
ガリガリガリガリガリガリ〜ッ
杏子「(雄二くん…机の端を鉛筆で…そっちこそ目立つわよ!)」
杏子「(『何か見つかったか?』ね…」
杏子「(それはこっちが聞きたかったんだけど…)」
杏子「(とりあえず、『校長は明日出張よ』)」
バサッバサバサバサッバサッ!!
生徒C「せ、先生! 教科書で何してるんです!?」
生徒A「も、ものすごく怪しい行動…」
雄二「(ピクピク…)」
杏子「えっ、あ、あはは★」
杏子「いや、今日は暑いから、ちょっと扇いでみたりしたりなんかなんか、えへへ★」
生徒B「動揺してるわ」
生徒A「怪しすぎる」
雄二「(ピクピクピクピクピクピクピク…)」
生徒E「あら、江国さん。顔色悪いですよ?」
雄二「せ、先生。ちょっと、気分が悪いんですけど…」
杏子「え、そ、そう? じゃあ、保健室に…」
雄二「すみません。先生、付き添ってくれませんか? 少し、目眩がするんで」
杏子「え…あ…はい!(めちゃめちゃ怒ってる!?)」
杏子「(やばいわ。やばいわ)」
杏子「じゃ、他のみんなは先生が戻ってくるまで、自習していてくださ〜い」
生徒たち「は〜い!(ラッキ〜! 自習よぉ!!)」
杏子「(ああ!? 雄二君の目が怖いわ!)」
雄二「(ピクピクピクピクピクピクピク…)」
その日、私立佐奈山高校の保健室で、生徒に説教される教師の姿が目撃されたという。
桐野杏子と江国雄二が公金横領の証拠を掴んだのは五日後のことだった。
杏子「ちゃんちゃん♪」
まりな「ちゃんちゃん♪じゃない!」
まりな「何よ! あのデキは!?」
まりな「私の教え子とも思えないわヨ…うるうる」
杏子「まりな先輩。ヨは茜さんですよ」
まりな「意味不明なことを言わないの!」
杏子「またまたまたまたまたまたまたまたまたまたまたまた…とぼけちゃってェ♪」
まりな「…はいはい。そのネタはもういいから!」
杏子「わからない人は、burst errorの小次郎編で確認ですよ!」
まりな「疲れるわ。この娘…」
杏子「では、ここで作者からの伝言です!」
ピッ…
まりな「!?」
まりな「杏子の口から紙が…」
作者「はじめまして、こんにちは。こんなしょうもないものを読んでくれてありがとう!」
まりな「真面目に書けばいいのに…」
作者「なお、このメモ及び杏子は自動的に消滅する」
まりな「えっ!?」
どが〜んっ★
まりな「ぎゃあああああっ!!」
☆★☆★☆★☆おしまい☆★☆★☆★☆
あとがき
はじめましての人、はじめまして、エルと申します。
はい、カルネアデスさんのモールス信号で何か書いてというリクにお答えしてみました。
いやぁ、しくじりましたね(笑) 何か、短いし…(汗)
名付けて、やっちまった小説ですね(謎)
もう少し、モールス信号を上手く使えるはずだったのですが…。
まぁ、過去を振り返るのはよしましょう(爆)
それでは、ごきげんよう!
あなたに幸あれ★
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