A・Iが止まらない!”0”− Spideer篇ぽん。 いつもの効果音と共にメッセージがモニタに走る。 『ウイルスを感染させました‥‥私へのダメージはゼロです。』 これもいつもの表示だ、 その後はお決まりの感染対象のプログラムを構成している文字列が走る‥‥ それを僕の相棒――みぃが的確に処理している。 僕は‥‥別にここに居なくてもいい‥‥そう、みぃが全てやってくれているから。 「お、またひっかかたのか?」 僕は部屋に入るなりデータ処理をしているみぃを見て、そう言った。 「ええ、なかなか面白いデータですよ。」 「みぃが言うんだから凄いんだろうな。」 ということでみぃが開いたデータに目を通す‥‥最近はこの作業が続いている。 このウイルスに関連する作業の原因は‥‥みぃなのだがまあそれはそれとして。 この前のウイルス”Spideer”をみぃが独断で、 ネット上に撒(ま)いてしまったのがそもそもの始まりだった。 実体化モジュール用に空のデータを創っていたのだが、 その作業中みぃを無視していたというか何というか‥‥ その間に”Spideer−α”を勝手に完成させてしまった。 昔の教訓を踏まえ、ウイルスに接触した者の所在をこちらに送り付ける処理をしてあったので、 週に2回はこの作業が続く。それ以降はその対象データを眺めたりしている。 まぁ、データを見るというより、実体化モジュールの起動実験用の グラフィックの参考を探している感じなんだけど‥‥この事をみぃは知らない。 今となってはこんなもの撒く気がなかったのだけどな‥‥。 気分転換にちょうど良い感じになってしまったが皮肉な結果か。 ぽん。 聴きなれた効果音と共にメッセージがモニタに走る。 ‥‥が、それはいつもと違っていた。 『ウイルスを感染させました‥‥私へのダメージは有ります。』 そう、今の今までとは異なったメッセージが表示されている。 それに伴い、ウイルス”Spideer”が現在対峙している者のデータを映し出す。 「”No.20”と”No.40”と‥‥なんだ、まーくん?」 プログラムらしからぬ名前に僕は拍子抜けした。 「神戸弥生ですって、まーくんを作ったの、可愛い名前‥‥。」 可愛いか‥‥ん、待てよ、神戸!? 「まさか、あいつのところのに感染したのか!?」 「きゃあ、いきなり大声出さないでください!」 みぃがなにやら文句を言っているがそんなもの無視だ。 僕はキーボードを叩こうとしたその時‥‥、 『”No.30”が現れました。待機モードから戦闘モードへ移行します。』 とモニタに表示された。 一方、ウイルス”Spideer”は”NO.0”に感染していたらしく、 名称が”0−Spideer”と変更されていた。 ”NO.0”の性能は”NO.30”を遥かに凌駕している。 よりにもよって、神戸ひとしのプログラムを乗っ取ってしまうとは。 「こっ‥‥これは‥‥ちょっちヤバイな‥‥。」 そこに今まで気にとめもしなかったテレビの音声が飛び込んでくる。 『先ほどからお伝えしております、全世界のコンピューターが何者かに 異常を誘発させられている事件に関しまして‥‥』 「‥‥くっ、まさかこんなことになるとは。」 ‥‥止められるのか奴を。僕はあいつほど優れた技術は持っていないんだぞ。 「ごめんなさい、私が‥‥。」 テレビに見入っていた僕はみぃの一言で冷静さを取り戻す。 「そんなことはどうでもいい、行ってくれるかい?」 「ええ、もちろん。」 「”NO.30”‥‥が稼動している間でないと勝ち目はない。」 僕はみぃが撒いてしまった”Spideer”を呼び出し、 ”0−Spideer”と”NO.30”が対峙している場所への最短ルートを呼び出す。 「よしでたぞ、これが最短ルートだ。」 「解りました。必ず辿(たど)り着きます。」 「ちょっと待った‥‥みぃ、こいつを連れていくんだ。」 みぃは出発した。僕に出来ることは‥‥まだある。 現在のこの光景を世界各地のテレビに映し出すことだ。 そんなことをしても意味が無いと思うだろう‥‥。 だが、みぃ――”NO.31”に搭載されているフィードバック機能、 これを搭載している”NO.30”の成長如何(いかん)では、 最大限の効果が示されるはずだ。 「頼んだぞ、”Spideer”!」 僕は世界各地のテレビ局へハッキングを開始した。 ―― The Sight of NO.31 着いた‥‥この”Spideer−α”の力を借りた私は、 信じられないほどの機動力を得、現場に到着した。 見た目は翼が生えたようになってるのよ。 そこでは”0−Spideer”と”NO.30”のエネルギーが ぶつかり合う光景が展開されていた。 これが私のオリジナル‥‥”NO.30”。 基本性能では私を遥かに凌駕している‥‥これがフィードバック機能の効果‥‥。 ”NO.30”が力尽き、”0−Spideer”から崩れ落ちる。 「――あきらめてはだめ。」 あわよくば私が”0−Spideer”を退治しようと思ってのだけど、 オリジナルに任せることにした、私は力添えをするだけしかできない‥‥。 「強く願えばどんな夢でもかなうんでしょ? あきらめてはだめよ。」 私は胸の前で両手を(かざ)し、光を集める。 その光は輝きを増しながら空へ上がっていく。 「ほら――。」 頂点まで達した光の塊(かたまり)は周囲に陽(ひ)を落とし、 今現在テレビを――この光景を見守っている人の映像が映し出される。 「人間ではないあなたと同じ時間を生き、あなたを支えてくれた人達――。 今 みんながあなたを見ている。あなたのことを想っているのよ。」 オリジナルと視線が交錯する‥‥なんだか変な感じね。 「さあ見せて頂戴あなたの力を‥‥。」 ”NO.30”に背を向け、僅(わず)かに顔だけを振り向かせ、 「アメリカで‥‥待っているわ。」 と言い残し、私は‥‥その場から閃光の中に消えた。 ―― The Sight of Billy_G 『私は‥‥敗北しました。対象のデータは‥‥。』 神戸ひとしの個人データがモニタを埋め尽くす‥‥。 ウイルスを打ち負かしたもののデータを盗み出す機能も搭載されていた、 こんな機能は忘れていた‥‥いや、もうどうでもよかった。 「ふ‥‥ナンバーサーティか。相変わらず驚かせてくれる。」 フィードバック機能‥‥なかなか良いものかもしれないな。 僕のオリジナルA・Iにも採用するべきか‥‥。 僕は ”NO.31”のフロッピーを排出し、無記入のフロッピーを挿入する。 フロッピーが歓送されたのを確認してから端末を操作し、 実体化モジュール搭載プログラムを走らせる。 まだ名前もないA・Iが実体化し、僕と同じ地面に立っている。 起動後の安定率はかなりのものになってきた‥‥これをみぃに採用できないものか? みぃが安定しない原因は何と無く解ってきた、疑心暗鬼なのだろう、 本当にそんなことが可能なのか‥‥と。 このオリジナルA・Iを見たらそんな不安が取り除かれるかもしれないな。 ―― The Sight of NO.31 ねぇ、”Spideer−α”。‥‥ごめんね。 私がこんなもの作っちゃったから‥‥仲間と戦わなくっちゃならなくなっちゃったのよね。 私は全世界にばら撒いた”Spideer”の処理をしている。 もう、二度とこんなことが起こらないように‥‥。 でも‥‥今一緒にいる”Spideer−α”の‥‥仲間なのに。 その刹那(せつな)、 ”Spideer−α”から意志みたいなものが、私の中に満たされる感じがした。 『気にするな”NO.31”‥‥僕は僕だ。 僕だって厄介なことを予防しておきたいと思ってる。 だからみぃ、さっさと片づけて‥‥帰ろう。』 「‥‥解ったわ、全力で行くわよ!」 ―― The Sight of Billy_G 「‥‥ただいま。」 みぃが帰ってきたようだ。 「ああ、おかえり‥‥。結構無茶したな。」 みぃのデータを確認しながら僕が言う。 「ちょっと無茶しましたから‥‥。」 舌を軽く出しながら、照れたようにみぃが呟(つぶや)く。 「じゃあ修復するか。おい、頼むぞ。」 「え?」 現在みぃと同化している”Spideer−α”の翼がみぃを包み込む。 「な、なんなんですか‥‥これ!?」 「そうか、いつも停止中にやってたからな、この作業。」 「さ、作業って?」 「こいつにはメモリから対象プログラムの破片を集めてきて再構成する機能があるのさ。」 「再構成‥‥。」 「まあそういう事、神戸ひとしのプログラムもこれを足蹴に復活しているかもしれないな。」 と何気にみぃに視線をやると、ある一点を凝視していることに気づいた。 「何を見てるんだ?」 みぃの視線を追っかけていくと‥‥オリジナルA・Iがいた。 「そうか‥‥起動しっぱなしだったな。」 この日を境に実体化モジュールの実験は終わった。 僕と同じ大地に降り立ったみぃ自身がその証拠として‥‥。 現在‥‥僕はある人の支援によって生活しているようなものだ。 その人は皮肉にも神戸ひとしの母親‥‥もちろんこの事は機密事項。 僕が――というかみぃがインターネットの相談所へ行ったのがきっかけで‥‥。 彼女曰く、「私だってこういう事したかったのよ。」だそうだ。 まあ、ご主人と息子があれだったので自粛してしまったのかもしれないけど。 そのおかげで、実体化モジュールを安定させるだけの器材は提供してもらっている。 それがなかったら先ほどの成功例はなかったんだから‥‥。 「おたのしみは‥‥これからだよ‥‥」 |
あとがき こんにちは、カルネアデスです。 今回で終わりです、なんかすごく長くなってしまいました。完璧趣味ですねこれ (^^; 結局単行本の説明が無いところの裏付けじゃないですけど‥‥やはり中途半端かと(冷汗) いろいろ詰め込みすぎて‥‥まだ入れ忘れているものがあるかも知れませんが‥‥。 中盤ビリーとみぃの一人称が交錯してますが‥‥やっぱり科白の前に名前書いた方が良かったかな? いや、そう言うの問題ではなくって誰の一人称と銘打った方が良かった‥‥と思ったので付けました(苦笑) それでは取り合えずここでいったん区切りということで‥‥乱筆乱文失礼しました m(_ _)m え〜‥‥最後ですので簡単に解説付けときます (^^;、 ”ビリー・G” 私が扱うとこんな感じになっちゃうのね。悪役全般って (^^; いや、こいつは言うほど悪役じゃなかったか? ”NO.31” ”NO.30”のコピーですね、ビリーが持ってる。 取り合えず愛称は‥‥1回目の後書き見てください (^^; ”Spideer−α” 機能が多いんですが‥‥いや多すぎです (^^; 伏線引きまくると結局これにばっかり影響が出てしまったという、 とんでもない事態に‥‥(苦笑) 最後は翼になってしまいましたが‥‥。 ”神戸ひとしの母親” えー、ビリーの後ろにいる人が気になってたので、 ここは一発お母様かなと‥‥なんでそう思ったのかは謎ですが(笑) ‥‥で、ビリーが実体化モジュール使うためには、 スーパーコンピューターが必須だと感じたので、ビリーの協力者ということで(笑) サーティと面影が似ている様な感じがしたからそうかと思ったのでしょう。 ”NO.31”を元に作ったモノだったとしても結局似てるので(笑) ”AI THINK SO! EPISODE II IN NEWYORK” これは最近‥‥多分、マガジンSPRCIAL1999年10月号の テレホンカード全員サービスの絵柄で使われていた”ネタ”です(苦笑) 手元に有りますが最近だったとしか覚えてないので‥‥。 語尾に『うそ』と書いてあるのがミソです(大笑) ”AI THINK SO!” A・Iが止まらない! の英訳。 A・IをIと読んだとしても「そう思います」‥‥意味が通りませんけどね(苦笑) 多分そのまま「AIだと思います。」と読ませて、人間じゃないと‥‥ A・I――人工知能だと思いますという意味かなと思ってますが‥‥。 最後に、今更書いていると言っておきながら、今更 EVE burst error を書いてたんだよね (^^; サターン版の発売日は1997年1月、A・Iは1997年7月連載終了(苦笑) 2000/06/28 改行タグ変更 簡易公開するために<PRE>を使っていたのですが、<BR>に変更しました。 |
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