2000/12/10 公開
担当:カルネアデス


機動戦艦ナデシコ

これから


#26 Ver.β


視界が開けると目前にはユリカさんとイツキが
カプセルの中で寝かされている情景が飛び込んできた、
他にも似たようなカプセルが多々ある……女性が寝かされているようだけど。

辺りから発せられる電子音、何かを測っているそんな気がした。
だからかもしれない、二人は無事だと感じたのは。

周囲もあわただしくなってきたようだ、近くや遠くで爆発音や
機銃の雄叫(おたけ)びが聴こえる……。

北辰「くくくくくくく……。」

後ろから不気味な笑い声が聞こえる。
僕はもちろん声の方へ向きかえる。

北辰「ここにいれば来ると思っていたよ。」

僕の目前に立ちはだかるあの男。
燕さんの一撃の影響は……あると思いたいんだけど。
編み笠を目深に被っているので表情は読めない……。

スウェーデンの人間研究所で初めて対峙した時と同じ……
ただ今回は北辰の容姿には乱れが生じている……多分、僕もだけど。

北辰「月臣は一緒じゃないようだな。」

素早く腰から短刀を抜く北辰。

北辰「女の前で……死ぬか?」

僕に向かって――迅速とも言うべき疾(はや)さで迫ってくる北辰。
今までの中で一番速いんじゃ!?……けど僕は冷静だった、
自分自身でも信じられないほどに……。

僕は先の北辰戦で使用した武器を抜き、北辰に備える。
あまりの速さのため編み笠は北辰の頭部に居座り続ける事は叶わなかった。

その刹那、表情を隠すものが無い北辰と視線を交わらせた。
物腰がしっかりとしている僕を見、北辰の表情に笑みが零ぼれる。

がきぃぃぃぃん!!

短刀を受け止める事は成功した……けど、その勢いは相殺できない。
身体が押される感覚を感じ、それが焦りとなって……。

その焦りを僕の表情から読み取ったのか北辰はさらに口を歪める。

どくぅ。

記憶喪失「ぐぅっ!?」

結局勢いは流す事も叶わず、僕は電子音を発する装置の一角に叩き付けられた。
叩き付けられたからと言って、北辰から開放されたわけじゃない。

叩きつけられた刹那、僕達の接点だった道具は弾かれ合ったが、
すぐさま北辰の刃物が僕の棒に再度、力を掛けて来る。

短刀に更に力を加え続ける北辰、その瞳は僕の顔を凝視している。
北辰の眼はまるで爬虫類(はちゅうるい)のそれなのでは……と思ってしまった。

爬虫類に負けてたまるか!!……と思ったかどうかは置いておいて、
僕は渾身の力を込めて両足前蹴りを見舞った。

北辰「くっ?」

そして地面との接点は背中に感じる電子音を発する何かだけという
不安定な状況下で、僕の右腕は銃を収めている右腰へと伸び、手に収め、
抜き去り、北辰へと銃口を向け、引き金に人差し手をかけ、指に渾身の力を込めた。

ドカァァァァァァァァン!!!

引き金を引く瞬間に爆発がこの部屋にも訪れた。
その爆発によって生じた爆煙の為、北辰に命中したのかは判らない。

しかし引き金は引ききった、もし引ききっていなければ僕は北辰に……。

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