私達が内調から飛び出したと同時に内調の正面に車が停車した。 白いオープンカー‥‥運転席には女性が助手席には男性が座っている。 二人ともサングラスを掛けている為、表情は読み取れない‥‥だけど。 私はこの二人が誰であるかを知っている気がしたの。 車に乗っている二人は内調を見上げ、呆れているようなそんな様子よ。 運転手の女性と助手席の男性がサングラスを取って私達を見つめているようだけど‥‥。 桐野杏子「‥‥雄二君!?」 助手席に乗っていた男性は私の最愛の人――雄二君だった‥‥ じゃあこの運転席に居る女性はもしかして‥‥。 氷室恭子「松乃さん!?」 私の発言は氷室さんによって掻き消されちゃったわ。 江国雄二「‥‥やぁ、また派手にやったんだな。」 雄二君が空を見ている‥‥視線を追うと内調が崩れていく様があったんだけど‥‥。 松乃広美「ただ、氷室さんの顔を見に来ただけだったんですけど‥‥ねぇ。」 特に慌てた様子も無く何時ものように笑顔を振りまきながら言ってのける松乃さん、 えっと松乃さんは佐久間さんのお嫁さんで‥‥はっ、今は説明している余裕なんかなかったんだわ。 甲野三郎「‥‥流石にこれだけの大人数は乗れないね。」 佐久間裕一「‥‥これは参ったな。」 全然緊張感の無い会話なんだけど‥‥。 男の子「お兄さん、これ!!」 佐久間裕一「これが天城くんの車の鍵だな。」 がちゃり。 佐久間裕一「桐野君こっちだ、君も‥‥だ。」 桐野杏子「‥‥え、天城さん達はどうするんですか!!」 甲野三郎「‥‥この車、ちょっと借りようかな。」 がちゃり。 桐野杏子「はい?」 本部長の独り言に振り返ると外車と思われる――左ハンドルの車の運転席に ちょこんと座っている本部長を見た。 甲野三郎「さあこの車に天城君を‥‥。」 氷室恭子「了解。」 天城さんを肩で支えた氷室さんが本部長が拝借した車に向かって歩いていく。 氷室恭子「‥‥あ、ちょっと桐野さん、来てくれない。」 天城さんを車に乗せながら私に呼びかける氷室さん。 桐野杏子「何ですか‥‥ってこ、こここここ!?」 甲野三郎「杏子君、深呼吸したまえ。」 桐野杏子「あわわわ‥‥。」 氷室さんが私に差し出したもの、それは天城さんの左手だった。 切断されて今も尚、銃を握り締めている左手‥‥。 本部長が氷室さんからその左手を奪い取った、 用事が終わった氷室さんは天城さんを車に乗せる作業を再開した。 甲野三郎「白のオープンカーに携帯冷蔵庫が積んであったようだからそこへ持っていきたまえ。」 本部長に右手を取られ、天城さんの手を掴まされる私。 桐野杏子「あわわわ‥‥。」 甲野三郎「大丈夫だよ、桐野君。ちゃんとビニール袋に入っているから。」 桐野杏子「そっ‥‥そういう問題じゃ!!」 その刹那、本部長の表情が緩(ゆる)くなった気がした。 甲野三郎「大丈夫だよ‥‥だけどね、早くしないと天城君の左手は永遠にそのままなんだよ。」 桐野杏子「え、永遠‥‥はっ。」 私はやっと理解した、本部長は天城さんの腕を元に戻す可能性の事を言っているのだと。 こんな事態が混沌としている状況下において、みんなは的確に行動している。 私が足を引っ張るわけにはいかない‥‥そう感じた瞬間。 どかかかかかかかっかん!!!!! 内調からすざましい音がした、外観を形作っていた物も崩れはじめたみたいよ。 一刻も早くここを立ち去らなければ私達に危険が及ぶわ。 私達は内調を背に出発をした‥‥けど、どこへ? |
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