フィボナッチ数列と面積1のパラドックス
定番パラドックス話について、こんな考察をしてみました。
フィボナッチ数列とはこういう関係もあったんですなぁ。



 1.こんなパラドックス、ありましたよね

 パラドックスの定番として、こんな話がありますよね。
 直角三角形をいくつかに分割して並べ替えると……あれ !? 同じ直角三角形のハズなのに! 面積1のピースが余っちゃうっ!
 これはパズル好きな方々はすでに知っている話だろうし、これのカラクリについては特に話すことはないでしょう。

 でも、この話、実は一般化できるということは知ってますか?


★ パラドックスのタネ明かし ★
 知らない方々のために解説を。
 右図の図形は2つとも同形同大に見えますが、実は違います。
 斜辺にあたる線は直線にしか見えないけれど、微妙に折れ曲がっているんですね。見た目にはわからないほど微妙です。

 チョイと拡大図を用意してみました。
 よろしければどうぞ
  ↓
 (別窓で開きます)



 2.フィボナッチの数列

 まず、その前に準備をひとつ。
 こういう数列を紹介します。

   1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,……(以下、無限に続く)

 これ、「フィボナッチ数列」と呼ばれるものです。
 まるで、デタラメに数字が並んでいるみたいだけれど、実はちゃんとした法則があるんですね。
 隣りあう3つの数を拾ってみると、その3つの数は足し算の関係になっているんです。
 たとえば、3,5,8 の場合は 3+5=8 だし、34,55,89 の場合は 34+55=89 になる。
 まぁ、もともとフィボナッチ数列というのは、2個の 1 から始めてそういう“足し算”の関係を満たすように新しい数字を次々つけ足してできた数列なんですね。
 だから、足し算の法則が成り立つのは当たり前っちゃぁ当たり前。

 でも、実はもうひとつ、隠れた法則があるんです。
 同じように隣りあう3つの数を拾います。その3つに関しては、足し算の法則以外に次のことも成り立つんです。

b^2-ac=±1

 なんと、両端の数の積と真ん中の数の2乗との差が 1 である、というわけですね。
 実際にやってみましょう。
 たとえば、3,5,8 の場合は 3×8−52=24−25=−1 ですね。
 そして、34,55,89 の場合は 34×89−552=3026−3025=1 となる。
 どの隣接3数をとるかによって引き算結果は変わるんだけれど、どっちにしても差は必ず 1 になるわけです(普通、「差」といえば大きい数から小さい数を引いた値のことを指しますもんね)。
 なんとも不思議。

 実を言うと、この法則はすでに証明されていて、「カッシーニ - シムソンの定理」と呼ばれるそうです。
 その定理を以下に示します。
 余力のある方々は、手頃な演習問題として証明してみるのもいいでしょう。

a[k+1]^2-a[k]・a[k+2]=±1



 3.おぉ! 同じパラドックス話だ!

34×55バージョン  1.のところでは「面積1のピースが余っちゃう!」という話をしました。
 2.のところでは「ac と b2 の差は必ず 1 になる!」という話をしました。
 どっちも、意味合いとしては「差が1だけ生じる」という言いかたができそうですね。
 実は、一般化のカギはここにあるんです。

 1.に出てきた直角三角形モドキは タテ13×ヨコ21 のサイズでした。
 この 13 と 21 はフィボナッチ数列の中で隣りあった数として出てきています。
 果たして、これは偶然なのか……?

 実は、偶然じゃぁないんです。
 なんと、こんなことが言えちゃうんです!

 フィボナッチ数列の中の隣りあう2つの数 c, d(c<d)を拾ってタテ c ×ヨコ d サイズの直角三角形モドキをつくり、同じようなパラドックス話を展開することができる。

 実際にやってみましょう。
 1.では c=13, d=21 でした。
 ここでは、c=34, d=55 としてみましょう。
 さぁ、右図をご覧あれ!

 どうでしょう?
 なんと、1.で書いたパラドックスそのまんまの話ができちゃうんです。
 すごいですね!
 「適度に分割して並べかえたら面積1のピースが余った」って、まったく同じ話なんだもの!



 4.一般的なお話

一般的  一般的な話をすると、フィボナッチ数列の中の隣りあう4つの数 a, b, c, d(a<b<c<d)を拾って右図のような図形をつくったとき、図形内の長方形と正方形の面積は常に 1 だけ違うんです。
 これは、2.のところで書いた「ac と b2 の差は 1 である」という理由によります。

【 注 意 】
 フィボナッチ数列では隣りあう3数は足し算の関係にある、ということを思い出しましょう。
 a+b=c と b+c=d が成り立っています。

 ただ、注意しなければいけないのは、ac−b2=1 だけでなく ac−b2=−1 が成り立つ場合もあるということ。
 つまり、隣りあう4数 a, b, c, d の選びかたによっては長方形の面積の方が大きい場合もあるし、逆に正方形の面積の方が大きい場合もあるんです。
 ということは、1.3.で書いたような「あれ? 面積1のピースが余っちゃった!」という話だけでなく、「あれ? 面積1のピースが足りないぞ !?」なんていう話もつくることができるわけですね。
 ちなみに、1.での話は a=5, b=8, c=13, d=21 の場合、3.での話は a=13, b=21, c=34, d=55 の場合に相当します。

 すごいですね!
 フィボナッチ数列ひとつで、いろんな大きさで話ができる。
 こぅなったら、大きな直角三角形モドキをつくって自分独自のパラドックスを講じてみるのも一興かもしれません。
 たとえば、タテ233×ヨコ377 サイズなんてどぅでしょ?(デカすぎだって)



 5.もうひとつのパラドックス話

もうひとつ  もうひとつ、似たようなパラドックス話として、こんなのがありますよね。
 右図のように、正方形を4つに分割して並べかえると……あれ !? いつのまにか面積が1減っている !?

 これも“1違い”パラドックスの定番なんだけれど、よ〜く右図を見ると、正方形&長方形ともに各辺の目盛り数字が 5 と 8 と 13。
 フィボナッチ数列に出てくる数字なんです。
 しかも、右図で長方形と正方形の面積計算のかけ算に出てきている数字は 8 と 13 と 21。
 これもフィボナッチ数列に出てきている。

 実は、このパラドックス話も一般化ができるんです。
 こんな感じです。

 フィボナッチ数列の中の隣りあう3つの数 b, c, d(b<c<d)を拾って、一辺を c とする正方形とタテ b ×ヨコ d サイズの長方形をつくる。これで、同じようなパラドックス話を展開することができる。

もうひとつ  一般的には、フィボナッチ数列の中の隣りあう4つの数 a, b, c, d(a<b<c<d)を拾って右図のような正方形と長方形をつくったとき、この2つの面積は常に 1 だけ違うんです。
 なぜなら、b, c, d はフィボナッチ数列において隣りあう3数だから。
 2.のところで「両端の数の積と真ん中の数の2乗との差が 1 である」と書いたけれど、これを適用すれば bd と c2 の差は 1 になるということが言えるわけですね。

 もちろん、4.と同様に、4数 a, b, c, d の選び方によっては bd−c2=1 だけでなく bd−c2=−1 が成り立つ場合もあります。
 だから、「あれ、面積1減った!」という話のほかに「あれ、面積1増えた !?」なんていう話もできたりするわけです。

 単に足し算でつくっていったフィボナッチ数列がパズルの世界にも関わっている。
 おもしろいモンです。



 6.おまけ

 オマケとして、フィボナッチ数列に関してもうひとつ。
 1.3.にある図を見ると、少し濃いめの直角三角形が2つあって斜辺がほとんど同じ傾きになってますよね。
 これにも、ちょっとした秘密がありまして。

 斜辺の傾き具合というのは、直角を挟む2辺の縦横比によって決まります。
 そして、その縦横比が同じであれば、傾きが同じになるんですね。
 んで、その濃いめの直角三角形の縦横の長さを見てみると、どれもフィボナッチ数列の中の隣りあう数になっている。
 実際、1.では、小さい方が 5 と 8、大きい方が 8 と 13 になってますよね。
 そして、3.では、小さい方が 13 と 21、大きい方が 21 と 34 になっている。
 チョットこれら4つの縦横比をそれぞれ計算してみましょう。

   8÷5 = 1.6
   13÷8 = 1.625
   21÷13 = 1.615384……
   34÷21 = 1.619047……

 おおぉ! ずいぶんまた、似たような値が並びましたね。
 縦横比がどれも 1:1.61 くらい。
 ついでに、フィボナッチ数列の隣りあう2数でいろいろ割り算をしてみましょう。

   55÷34 = 1.617647……
   89÷55 = 1.618181……
   144÷89 = 1.617977……
   233÷144 = 1.618055……
   377÷233 = 1.618025……
   (以下略)

 なんと! 先の4つよりもさらに値が似ているっ!
 縦横比が 1:1.618 くらいですね。

 もしかしたら、1.618 という数字を見て「ピーン!」ときた方々もいるかもしれません。
 そうなんです。この 1:1.618 という比、「黄金比」というものに似ているんです。
 この黄金比、フィボナッチ数列との間には関係がひとつありまして。
 実は、こんなことが成り立つんです。

隣りあう2項の比=1:(1+√5)/2

 1.3.にある図において2つとも合同にしか見えない理由は、濃いめの直角三角形の斜辺の傾きを表す縦横比が2つとも酷似しているということなんですね。
 ちなみに、2.の「カッシーニ - シムソンの定理」と同様に、この黄金比に関する性質もすでに証明されています。
 その定理を以下に示します。

lim[n→∞] a[n+1]/a[n]=(1+√5)/2

 黄金比は実にさまざまなモノと関係が深かったりします。
 フィボナッチ数列のほかには、正五角形の対角線とか正20面体とか。
 興味があれば、いろいろ調べてみてください。



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管理人:E坂もるむ