1.全米を揺るがしたモンティ・ホール問題
モンティ・ホール問題。
まぁ……有名ですよね。
確率を問う問題だけど、本当に誰もがみんな間違える。
今回はこの不思議な問題を話してみたい。
まず、「モンティ・ホールって何だ?」という疑問がありますよね。
モンティ・ホール問題が生まれたのは、とあるテレビ番組からです。
『Let's Make a Deal』という名の、アメリカの番組。
これは1963年に放送開始され、今なお続いている長寿番組です。
この番組に30年近く出演されている名物司会者がモンティ・ホールです。
当時、後に大きな話題となるゲームが行われていました。
3個のドアを使ったゲームです。
ここに3個のドアがある。
その中の1個には豪華賞品である「車」が隠されており、他の2個にはハズレを表す「ヤギ」が隠されている。
この中から車を当てようというゲームだ。
ドアは1番, 2番, 3番としておこう。
まず最初に、挑戦者はドアを1個選ぶ。
ここでは1番を選んだとしよう。
その後、司会者は3番のドアを開け、ヤギが居たことを明かした。
残ったドアは2個。
ここで、司会者は挑戦者に問う。
「今のうちならドアの選択を変更できます。2番に変更しますか?」
このゲームを初めて見た時、おそらく誰もが真実には気付かなかったことでしょう。
所詮どちらも確率50%であり、車が当たるか否かはただの「運」に過ぎないと。
しかし、そう考えなかった人物がいました。
マリリン(Marilyn vos Savant)という名の女性です。
この女性、実は「最高の知能指数を持つ人物」としてギネスブックに載っています。
彼女は『Parade』誌の「Ask Marilyn」(マリリンに聞いてみよう)というコーナーを担当し、さまざまな事柄について読者から寄せられた質問に回答していました。
「最高の知能指数」というくらいだから、毎号毎号、卓論を披露して読者達を大いに惹きつけていたことでしょう。
そんな中、騒ぎのキッカケとなったのは 1990年9月9日号です。
モンティ・ホール問題に関する質問が読者から寄せられた時、マリリンはこう回答しました。
ドアを変えた方が良い。
なぜなら、当たる確率が2倍に増えるから。
確率が 1/3 から 2/3 に上がるから変えるべきだと主張したんです。
ところが!
これが大きな波紋を呼んでしまった。
反発する読者が次々と現れてしまったというのです。
しかも、その中には数学者もいて、彼らからも失望の声が上がったという!
まさに今で言う「炎上」。これが火種となったのか、このモンティ・ホール問題は CBSのドラマ『Numbers』や『Financial Times』紙でも取り上げられ、全米を騒がすほどの話題になっていきました。
現在では、みなさんご存じの通り、マリリンの主張が正しいということがわかっています。
なぜドアを変えた方が良いのか?
それをこれから話していきましょう。
2.なぜドアを変えた方が良いのか?
とは言っても……モンティ・ホール問題については、もぅもぅもぅ実に多くの書籍・サイト・ブログ・動画などで散々説明されてきたことなんですよねぇ。
もぅ「何番煎じだよw」とツッコまれること請け合いだ😅
でも、そんなのアタシゃ気にしない! 解説するぞ!
基本に立ち返って解説していきます。
まず、一連の流れを確認しましょう。
- 挑戦者は3つのドアから1つを選ぶ。
- 司会者はハズレのドアを1つ開ける。
- その後、司会者は「ドアの選択を変えるか否か」を挑戦者に尋ねる。
この流れの後で、「果たして挑戦者はドアの選択を変えた方が良いのか?」と問うのがモンティ・ホール問題なんですね。
要は、こういうことです。
選択を変える or 選択を変えない。
豪華賞品の当たる確率はどちらが高いですか?
「どちらが上か?」と聞かれている。
ならば、これからやるべきことは簡単です。
両者の確率を比較すればいいんです。
とりあえず、後者の確率、つまりドアの選択を変えない場合だと豪華賞品の当たる確率は 1/3 です。
なぜなら、上述の手順 1. で行った選択がそのまま最終決定になりますもんね。
ということは、前者の確率さえわかればモンティ・ホール問題は解決だ!
じゃぁ、実際に確率を計算してみましょうか。
ドアA, B, Cを用意します。
話をわかりやすくするために、ここでは、ドアBが当たりだったとして説明しましょう。
挑戦者は初めにドアを1つ選びますが、その選び方は3通りありますね。
それぞれの場合において、ドア選択を変えた結果がどうなるかを見ていきます。
まず、初めにドアAを選んだ時はどうなるか?
挑戦者はハズレのドアを選んだことになるから、司会者はもう1つのハズレのドアを開けます。ドアCですね。
その後、挑戦者はドアをAからBに変更するから、当たりを引けますね。
豪華賞品ゲット💖
次に、初めにドアBを選んだ時はどうなるか?
挑戦者は当たりのドアを選んだことになるから、司会者はハズレのドアの一方を開けることになりますね。どちらを開けるかは司会者が勝手に決めますが、ここではAとしておきましょう。
その後、挑戦者はドアをBからCに変更してしまい、結果はハズレになっちゃいますね。
あぁ残念😞
最後に、初めにドアCを選んだ時はどうか?
挑戦者はハズレのドアを選んだから、司会者はもう1つのハズレのドアAを開ける。
その後、挑戦者はドアをCからBに変更して、結果は当たり!
豪華賞品ゲット💖
結果をまとめましょう。
次の通りになりました。
- 【ドアAを選択】
- 豪華賞品ゲット💖 おめでとう!
- 【ドアBを選択】
- あぁ残念😞
- 【ドアCを選択】
- 豪華賞品ゲット💖 おめでとう!
豪華賞品をゲットできる確率は 2/3 なんですね。
選択を変えれば確率 2/3。
選択を変えなければ確率 1/3。
もぅ結論は決まりましたね!
- ドアの選択を変えた方が良い。
これがモンティ・ホール問題の結論です。
マリリン女史の言ったことは正しかったわけですね。
ついでに。
さらに基本に忠実、原始的な方法で確認してみましょう!
「一覧表を作る」という方法です。
賞品の位置と挑戦者の最初の選択、全9通りの組み合わせをコツコツ調べるんです。
賞品のあるドア | A | A | A | B | B | B | C | C | C |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
挑戦者が初めに選んだドア | A | B | C | A | B | C | A | B | C |
司会者の開けられるドア | B,C | C | B | C | A,C | A | B | A | A,B |
選択を変えなかった結果 | 勝ち | 負け | 負け | 負け | 勝ち | 負け | 負け | 負け | 勝ち |
選択を変えた結果 | 負け | 勝ち | 勝ち | 勝ち | 負け | 勝ち | 勝ち | 勝ち | 負け |
選択を変えた場合、9分の6の割合で当たりを引ける。
賞品ゲットの確率は 2/3 となるわけですね。
3.極端な例で考えてみると……
ここからは余談です。
ちょいとアホみたいなことを考えてみます。
ドアをアホみたいに増やしたれ!
今まではドア3個だったから、確率は約66.6%ということで正解は「選択を変えた方が良い」でした。
でも、別に3個に限らなくてもいいじゃない!
ドアをべらぼうに増やしたら確率は何%になるんだろう?
それを考えてみたい!
というわけで、ドアを 1000個に増やします😅
もちろん、当たりは1個、ハズレは999個。
そして、一連の流れをこう変えちゃいます。
- 挑戦者は 1000個 のドアから1つを選ぶ。
- 司会者はハズレのドアを 998個 開け、ドアを2個だけ残す。
- その後、司会者は「ドアの選択を変えるか否か」を挑戦者に尋ねる。
さて、この場合、挑戦者はドアの選択を変更した方が良いんだろうか?
前セクションから察するに、選択変更した場合の賞品ゲット確率は50%よりも大きそうですよね。
果たして、実際はどれくらいの値になるのだろう?
ちょい楽しみだ。
ドアを1000個も作る美術さんも、ヤギを999頭も用意するスタッフさんも、ドアを998個も開けるモンティ・ホールさんも、ドア1000個も並べるための撮影スタジオを用意するテレビ局も、ホールさんが延々ドアを開けていく様を見続ける視聴者さんも大変だけど、まぁ、これも仕事なんで頑張ってください😅(あ、視聴者さんは仕事じゃなかったわ)
この場合も、前セクションと同様に基本に立ち返りましょう!
ドア選択を変更した場合の確率を実際に計算してみます。
ドア1, 2, ……, 1000 を用意します。
ここでは、ドア1000が当たりだったとしましょう。
挑戦者は初めにドアを1つ選びますが、選び方は1000通りありますね。
それぞれ結果はどうなるか。
初めにドア1を選んだ時、挑戦者はハズレのドアを選んだことになる。
だから、司会者はハズレのドア2〜999をすべて開いてドア1と1000だけを残し、挑戦者にドア変更を問う。
挑戦者はドア1000に変更するから、見事に大当たり💖
また、初めにドア2を選んでも理屈は同じで、結果は当たりです。
ドア2と1000だけが残された後、1000にドア変更しますもんね。
初めにドア3〜999のどれを選んでも同様です。
対して、初めにドア1000を選んだ時、挑戦者は(偶然にも)当たりのドアを選んだことになる。
この時、司会者はドア1〜998(つまりハズレのドア998個)を開いてドア999と1000だけを残し、挑戦者にドア変更を問う。
挑戦者はドア999に変更してしまい、残念賞😞
というわけで、結果は次の通りです。
- 【ドア1〜999を選択】
- 豪華賞品ゲット💖 おめでとう!
- 【ドア1000を選択】
- あぁ残念😞
なんと、ドアの選択を変えた場合、賞品ゲットできる確率は 999/1000 です。
驚異の99.9%😅
マジか😅
こんなん、さっさと変更した方がいいですやん😅
逆に、選択を変えなかった場合は 0.1%です。
もしあなたが 1000分の1という針の穴に通したい漢気あふれる人なら、初志貫徹あるのみ!
それで本当に豪華賞品を当てたなら、君は漢だ! 英雄だ!
参考・参照
- ジュリアン・ハヴィル 著, 松浦俊輔 訳, 青土社,『世界でもっとも奇妙な数学パズル』(第1刷), 2009
更新履歴
- 2023. 2.10.
- 新規公開。