【解説】Cannibalism

 Fish 系の解法はベースセットとカバーセットを基本として論理展開されていきますが、それに付随する形でさらに奥深い概念も存在します。
 このページでは、Cannibalistic Fish を解説していきます。
 このページを理解するためには、ベースセットとカバーセットを理解している必要があります。
 (難易度:★★★★★)

1.交差箇所のあるカバーセット

 まずは、ベースセットとカバーセットについて軽くおさらいしつつ、カバーセットに特徴のある Fish を紹介します。

 ……とその前に、house という用語を紹介しましょう。
 house とは、タテ列・ヨコ列・ブロックの総称です。
 これは英語のナンプレ解説サイトでも使われている用語で、英語の解説を読むと house というワードがやたらと現れます。
 「house」というワードが出てきた場合、タテ列・ヨコ列・ブロックのどれかを指すものだと考えちゃってください。

 また、このページでは ベース houseカバー house というワードも使うことにします。
 それぞれ「ベースセットの一員である house」「カバーセットの一員である house」を表すものと考えてください。

図 1-1

 さて、図1-1 の Mutant Swordish を例にとりましょう。
 その Fish は次の状況になっています。

  • 3個の青色 house(タテ1列&ブロック2個)において、数字1の入り得るマスは★しかなかった。
  • そして、その★マスすべてを3個の黄色 house(タテ1列&ヨコ2列)で覆い尽くせた!

 青色 house を全部まとめてベースセット、黄色 house を全部まとめてカバーセットと呼びました。

図 1-2

 そして、実は、前図1-1 のカバーセットには大きな特徴があります。

  • カバー house 同士が交差している。
  • その交差箇所に★は1つもない。言い換えると、どの★マスもただ1つのカバー house に属している。

 前図1-1 の Fish、カバーセットを見ると交差箇所が2つあります。
 ただ、そのマスに★はありませんでした(図1-2)。
 カバー house を掛け持ちしている★マスは1つもなかったんですね。

 もちろん、カバー house の交差箇所が★マスであるという場合も十分に考えられます。
 じゃぁ、その場所に★があった場合はどうなるんでしょう?
 それについて、以降のセクションで解説していきましょう。

2.Cannibalistic Fish って何ぞや?

図 2-1

 図2-1 を見てみましょう。
 3個の青色 house(タテ1列&ブロック2個)において数字1の入り得るマスを探した時、★の位置にしかなかったとします。
 ★は12個あります。

 なんだか★の配置が前セクションとすごく似てますね!
 違うのは「★が2個増えた」くらいのモンでしょうか。

図 2-2

 これも同じように★マス全部をカバーセットで覆い尽くすことができそうですね。
 じゃぁ、3個の house で覆ってみましょうか。

 おぉ、★マス全部を覆い尽くせました😊
 タテ1列とヨコ2列で見事スッポリ!(図2-2)

 ベースセットは青色のタテ1列&ブロック2個。
 カバーセットは黄色のタテ1列&ヨコ2列。
 12個の★マスで構成される Mutant Swordfish ができました。

図 2-3

 ただ、この Fish は前セクションとは決定的に違うところがあります。
 カバー house の交差箇所に★があるんです。赤色★マスです。
 そのマスは2つのカバー house を掛け持ちしてるんですね(図2-3)。

 あらためて、この Fish の状況を説明しましょう。
 こういう状況です。

  • 3個の青色 house において、数字1の入り得るマスは★しかなかった。
  • そして、その★マス全部を3個の黄色 house で覆い尽くせた!
  • しかも、黄色 house 同士が交差していて、その交差箇所にも★がある!

 カバー house 同士が交差していて、その交差箇所にも★がある。
 これが重要です。
 この特徴を持った Fish のことを Cannibalistic Fish と呼びます。

 さて、ここで1つ疑問が生じます。
 どこら辺が「Cannibalistic」なんでしょう?

 cannibalistic には「共食いの」などの意味がありますが、「カニバリズム」というワードでも知られているように、なんとも野蛮なイメージがつきまとってしまう名前。
 Fish 系の解法と共食いに何かしら関係があるんでしょうか……?

 それは、Cannibalistic Fish が持っている、とある性質が理由なんです。
 それを次のセクションで解説しましょう。

3.仲間が食べられちゃう !?

 このセクションでは「Cannibalistic」という命名に少し迫ってみます。
 あっ、たいして迫れてるわけじゃないので期待しないでください😅

図 3-1

 実は、前セクションの Cannibalistic Fish からはこういう結論が得られるんです。

  • カバー house 同士の交差箇所にある★マスに数字1は入らない。

 図3-1 だと、×印の2マスが該当します。
 この2マスで黄色 house が交差していますが、この2マスに数字1は入らないというわけなんです。

 ていうか、これ、まさに 図2-3 の赤色★マスじゃぁないですか!
 そこにピンポイントにバツがつくというわけです。
 なんともわかりやすい結論だ!

 なぜ、こういう結論になっちゃうんだろう?
 それを解説しましょう。

図 3-2

 図2-3 の赤色の★マスにも数字1の入る可能性は一応あります。
 じゃぁ、「マスAに数字1が入る」と仮定してみましょう。

 すると、右側の青色タテ列では1の入るマスはCしかありません。
 Cに1を入れちゃいます。
 そのあと、左下青色ブロックでは数字1の入る場所……ん? あれ?

数字1の入るマス、ないやんけ!

 なんと、その青色ブロックは……完全に1を入れられなくなっちゃいました😣
 破綻してしまったんです(図3-2)。
 実は、「マスAに1が入る」と仮定するとどうやっても破綻が起こります。まったく数字1を入れられないベース house が生じてしまう。
 よって、その仮定は間違いであると結論づけなければいけません。

 もちろん、マスBも同様で破綻が待っています。
 結局、この2マスに数字1は入れられないんです。
 図3-1 の結論通りになりましたね😄

 さぁ、結論が1つ得られました。
 この結論が Cannibalistic とどう関係あるんでしょう?
 それを説明しましょう。

図 3-3

 あらためて、前セクションの Cannibalistic Fish を見てみましょう。
 図3-3 です。

  • 3個の青色 house において、数字1の入り得るマスは★しかなかった。
  • そして、その★マス全部を3個の黄色 house で覆い尽くせた!
  • しかも、黄色 house 同士が交差していて、その交差箇所にも★がある!

 この Fish は 12個の★マスで構成されています。
 しかし、先ほどの結論のおかげで、すぐさま★を2個除去することができますね。そのマスに数字1は入らないということがわかったから。
 じゃぁ除去しちゃいましょう。

図 3-4

 最初は★マスが12個あった。それが10個になりました(図3-4)。
 こういうふうに、Cannibalistic Fish は★マスがいくつか除去されて必ず姿が変わります。

 これ、★マスの立場からすると、お仲間がちょっと減ったと言えますね。
 実際、12人いた仲間が 10人に減っちゃったし。
 物騒な表現になるけれど、こんな言い方ができそうですね。

12人いた仲間のうち、2人を食べた。

 これが「Cannibalistic」の所以、といったところでしょうか。

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