【コラム】ワードが見えないワードナンプレ

 ワードナンプレは、数字を文字に変えてキーワードを盤面に盛り込んだナンプレです。
 普通はそのワードが目立つように盤面に表出させますが、別の試みが過去にはありました。
 「キーワードを隠す」という、一風変わったワードナンプレの話です。
 (難易度:★★★)

1.キーワードにインパクトあれ!

 ナンプレは数字を使ったパズルです。
 さまざまな解法を駆使して盤面を1桁数字で埋めていく。
 もぅ皆さんは何万回となく数字をマスに書いてきたことでしょう。

 もちろん、それらの数字は単なる文字記号でしかありません。
 だから、数字を文字に置き換えた「ワードナンプレ」が世に現れるのはごく自然というものです。
 まずは、一般的なワードナンプレについての話をしましょうか。

図 1-1

 ちょいと一つ思い出した。
 今は亡き『ナンプレファン』というパズル誌で、私はワードナンプレを作ったことがあります。

 当時のワードナンプレは、カタカナ9文字の言葉を盤面の1カ所に配置し、それを引き立たせるような問題図にするというパターンが多かった。
 まだ若手(パズル作家4年目)だった私は「カタカナばっかじゃつまんねぇぜ!」と血気盛んなお年頃😅
 多種多様な文字を織り交ぜて作ろうとしていた記憶があります。
 7問製作したけど、そのうちの1つが 図1-1 です。

  • 使用する9文字は「4人打ちマージャン」。

 時は 2002年6月号の話。
 いやぁ〜、懐かしいモンですわ🥰

 実は、ワードナンプレを作る際、9文字のキーワードにこだわる必要はありません。
 使用文字が9個でありさえすれば良いのです。
 だから、もぅちょいキーワードに工夫の余地がある。

図 1-2

 例えば、2024年の WSC選抜大会 のワードナンプレ。
 これも私が作ったんだけど、その問題図は 図1-2 です。

  • 使用文字は ADEHLORTW の9個。
    ウィ〜ア〜ザワァ〜!

 10文字以上の長い言葉、あるいはフレーズ1つ。
 こういうのもキーワードとして使えるんです。
 もちろん、長かったり有名だったりすれば目を惹く物となる。
 製作当時はこういった長いキーワードをどうしても入れたくて、パソコン前でも布団の中でも言葉の引き出しを片っ端から開け閉めしてました。

 どうでもいい話ですが、盤面が12×12サイズだと理論上は「ウィ〜ア〜ザチルドレ〜ン!」も使えます(C, I, Nが加わるだけなので)。
 まぁ盤面が狭すぎて両方を配置する場所なんてないけどさ😅

 こういうキーワード表出のナンプレは、スタンダードナンプレと本質的に同じです。
 文字であろうと最後まで理詰めで解けなきゃいけないですもんね。
 だから、わざわざ文字を使うのであれば、問題図のインパクトは無視するべきではない。
 センスの光る言葉やフレーズを選びたいものです😊

2.キーワードが隠れてしまった !?

 大抵のワードナンプレは、前セクション1のようにキーワードが表出しています。
 しかし、それが絶対だというわけではありません。
 キーワードを隠し、解き手に当てさせる。そういうタイプのナンプレを考えることもできるんです。

図 2-1

 ナンプレのフォーラムサイト『The New Sudoku Players' Forum』には、ワードナンプレを論じたスレッド Word Sudoku があります。
 その中で1つの試みが提案されました。
 図2-1 です。

  • 使用文字は AEGILNRST の9つ。
  • タテorヨコのどこか1列に9文字の英単語が隠れている。

 まぁ隠れているとは言っても、その場所はおよそ見当がつくでしょう。
 そう、1文字も入っていない唯一の列、黄色ヨコ列です。
 果たしてそこにはどんな単語が隠れているのだろう?

 使うのは上述の9文字。
 アナグラムをして単語を見出さなきゃいけません。
 もしかしたら TRIANGLES を思い付いた方々は多いかもしれない。
 数学好きな方々なら INTEGRALS の方が多いかな……?

図 2-2

 でも、TRIANGLES も INTEGRALS もタテ列に同じ文字がダブっちゃう。
 どっちも不正解です。
 あらま😞

 まぁとりあえず理詰めで進めてみましょうか。
 そうしたら、図2-2 まで来ました。
 もぅこれ以上は理詰めで解けません。

 黄色列の最後はTだった。
 アナグラムで「なんちゃらT」にしなきゃならんけど、はて、何Tだ?
 果たして、正解の英単語は何だろう??

図 2-3

 正解はこの単語でした。

  • 正解は GNARLIEST だった。

 初めて見た!
 こんな単語があるのか💦

 ちょいと Weblio英和和英辞典で調べてみました。
 gnarliest は形容詞 gnarly の最上級。
 また、gnarly は gnarled と同義で、gnarled は「(木などが)節だらけの・コブだらけの」という意味でした。

 この単語、英語圏での使用頻度はどれほどなんだろう?
 当のスレッドには「総合的にこれは簡単レベルのパズルです」という発言があったから、Tしか見えてなくても gnarliest は思い付くのかな。
 私のようにあまり英語に慣れていない人々には高難度かもしれません。
 ちなみに、私はアナグラム検索サイトで gnarliest を初めて知りました。

 断片的に判明した文字から単語を推測する。
 これって、まさにクロスワードやナンクロと同じ解き方なんですね。
 つまり、ワード系パズルの考え方が必要になってくる。
 理詰めとはまた違う、新しい手法が現れた!

図 2-4

 キーワードの隠し方にはもぅ少し工夫を施せます。
 例えば、斜めに配置しちゃう。

  • 使用文字は AELNPRSUW の9つ。
  • 対角線に9文字の英単語が隠れている。

 タテヨコだと同じ文字は複数使えないけど、斜めだと文字はダブっても良い。
 図2-4 の NEWSPAPER みたいに、7種類の文字でも実現可能なんです。
 そうすれば、残り2種類の文字は何でもOKになりますね。

 パズル製作者としては、その2文字をうまく活用したいところ。
 もし newspaper 以外の単語を作れそうな2文字があるなら、それを選ぶという手もあります。
 解き手を騙して引っかける。これもパズル製作における喜びの一つですからね🤣

 こういうタイプのナンプレを解く場合、「キーワードの推測」という過程が必須となる。
 そのため、数理パズルとしては複数解を持っていると考えて良いでしょう。
 実際、図2-2 では理詰めが頓挫しちゃいましたしね。
 その時は、黄色ヨコ列の解決へ向けて自分のボキャブラリーを武器に新たな戦いが始まるわけです。
 黄色マスそれぞれの候補文字(候補数字ではない)を調べると、さらに戦いが有利になるでしょう。

 複数解をボキャブラリーで解消するという性質上、こういうナンプレは純粋な数理パズルだとは言いにくい。
 この事実は、ナンプレ好きな方々の間で賛否が分かれるかもしれませんね。
 理詰めの価値が下がった不完全なナンプレと見るか、それとも言葉遊びという付加価値が生じたハイブリッドなナンプレと見るか、見方は人それぞれでしょう。

3.1個がダメなら山ほど並べればイイじゃない

 前セクション2では斜め配置という工夫を示し、ワードナンプレに少しだけ深みが増しました。
 とは言え、1つの長いキーワードを配置することには変わりありません。
 そのキーワードが判明してしまったら、後は普通のナンプレと化してしまう。
 そこをなんとか工夫して、さらにワードナンプレに深みを持たせられないものだろうか……?

 要は、単独のキーワードがそのまま「最後の砦」なのだから、砦が陥落してしまったらもぅおしまい。
 そこが欠点だった。
 ならば、砦を山ほど建造するという案はどうか?
 複数のキーワードを盤面にちりばめる。そういうアイデアです。

 しかし、ワードナンプレに許される文字はたったの9種類。
 盤面にキーワードを何個も配置するなんて、とても現実的だとは思えない。
 この板挟み、なんとか解決できないものだろうか……😞

図 3-1

 そこで大いに役立つ物が1つあります。
 それは「略称」です。

 例えば、図3-1。
 元素記号を盛り込んだナンプレをちょいと作ってみました😊

  • 使用文字は ACEGHMNUX の9つ。
  • 枠で囲った2マスには元素記号が入る。
    (小文字と大文字は区別しない。例えば、ヘリウム He は HE と表記する)
  • 同じ元素記号は2個以上入らない。

 ここでは、盤面に入る元素記号をリストアップしないでおきます。
 推測しながら解いていきましょう。
 He, Ne, Na, Mg, Ca, ……、選択肢は山ほどあるので、歯応えは期待できそうかな。
 正解はこのページにて。

 いや〜、短い言葉は本当に重宝する!
 砦だらけの盤面ができあがる!
 しかも、元素記号には Cu, Au, Ag, Hg など似通った物も多いから、枠に1文字入っただけでは砦は陥落しにくい。
 もぅもぅ解き甲斐は十分! ……だとイイな😅

 略称に関しては、言語の差が如実に現れますね。
 カタカナはどうにも不利を強いられる。
 我々の作る略称は「ドラクエ」などのように 2文字+2文字 の形が割と多く、9×9サイズに対しては長くて使いにくい。
 テーマを設けなければカタカナ2〜3文字で砦をちりばめられるけど、それではインパクトが弱い。
 カタカナでこのタイプを製作するには、もう一つアイデアが欲しいところです。
 あっ、逆手に取って「ドラ」「クエ」と1マスに2文字入れるという手はアリかもね😄

 もちろん、英語以外の言語であっても、短い略称を量産できるなら非常に強い味方となります。
 まぁ我々に最も近い外国語は英語でしょうから、このタイプのワードナンプレ製作には英語が重宝するでしょう。
 例えば、アメリカ50州などは打ってつけかもしれない。2文字ばっかりだしね😃

4.解が2通り !? デュアル・ワードナンプレ

 セクション2では、使用文字をアナグラムしてキーワードを見つけました。
 文字によっては複数のキーワードを作れたんでしたっけ。
 TRIANGLES, INTEGRALS, GNARLIEST のように。
 この場合は GNARLIEST だけが正解で、その後、唯一解(図2-3)が得られたわけですね。

 そこで、この話にもう一歩踏み込んでみる。
 「複数のキーワードを正解にできて、どのキーワードでもそれぞれ唯一解に至る」
 そんなワードナンプレは作れるのだろうか……?

 『The New Sudoku Players' Forum』のスレッド「Magic Sudoku」。
 これは魔方陣を絡めた話のスレッドだけど、この 投稿記事 でポッとワードナンプレの話が出てきました。
 「真の天才は二重の解を持つワードナンプレを作ってしまうのかもしれない」
 「一方のキーワードが他方のアナグラムとなるような」……と。

図 4-1

 その発言を受けて、その「真の天才」に近づこうとした人がいた。
 その方の作品が 図4-1 です。

  • 使用文字は ACEGLNOTU の9つ。
  • 黄色の対角線にキーワードが隠れているが、それは2通りある。両者はアナグラムの関係になっている。
  • 使用文字のうち、1つだけはキーワードに使われない。

 2つのキーワードをそれぞれ入れて、図4-1 から2通りの完成図を作ろう!
 そういうコンセプトです。
 上述の投稿記事では「a Word Sudoku with DUAL solutions」と書かれていたから、デュアル・ワードナンプレ と名付けておきましょうか。

 もぅネタバレをしちゃいますが、対角線に入り得るキーワードは次の2つです。
 CATALOGUE と COAGULATE。
 両者はアナグラムの関係になってますね!

 もし CATALOGUE を採用しても唯一解、COAGULATE を採用しても別の唯一解が得られたとしたら、さぞかし芸術的なデュアル・ワードナンプレになったことでしょう。
 しかし、残念ながらそうはなりませんでした。
 図4-1 からはたった1マスしか埋まらず、キーワードを突き止める手掛かりがほとんどない。
 しかも、どちらのキーワードを黄色列に入れても唯一解にはなりません。
 作者ご本人はこのナンプレを良作だとは自認しておらず、もう少し時間をかけてさらに面白いナンプレを考えてみますといった発言をしていました。

 いやぁ、なんだかもったいないと感じちゃいましてね。
 図4-1 はスカスカっぽく見えるので、ヒント文字を増やせば唯一解にできそうな気がするんです。
 そこで、私はなんとか試行錯誤をしてみました。
 下図の通り、ヒント文字を4つ増やして完成図はできました。

 デュアル・ワードナンプレ!
 CATALOGUE でも COAGULATE でも唯一解を持ちます。

 しかし、これでも私は良作にはできませんでした。
 初期配置からは2マスしか文字が埋まらず、早々にキーワード頼りになってしまう。
 これがどうにもこうにも気に入らない。
 問題図から理詰めだけで程良く盤面が埋まり、そのおかげでキーワードを推測しやすく、まぁまぁの難易度のアナグラムで別のキーワードが見つかり、どちらのキーワードでも唯一解に至る。
 これが私の思う理想のデュアル・ワードナンプレだけど、最初の段階すらクリアできていない……😞

 ただ、これは無理もない話でして。
 2つのキーワード CATALOGUE, COAGULATE において同じ位置にある文字は、両端のCとEしかない。
 他の7文字はすべて位置が異なる。
 そのため、おいそれとはヒント文字を増やせないんです。
 例えば、左上ブロックにはA, T, Oの3文字が黄色列に並ばなきゃいけないから、左上ブロックの白マスにヒント文字A, T, Oを追加できない。タテヨコの列に対しても、同様の理由でヒント文字を追加しにくい。
 もぅもぅもぅとにかくヒント配置の制限が厳しいんですね。
 私はキーワード配置後にヒント文字を追加して唯一解へ持っていったけど、そのせいで序盤の理詰めが機能しない問題図になってしまいました。

 良作のデュアル・ワードナンプレを作るのは、おそらく至難の業のような気がします。
 上述の「真の天才は二重の解を持つワードナンプレを作ってしまうのかもしれない」のように、そういうワードナンプレを作れるのは天才だけかもしれないな。
 でも、そういうナンプレは興味を惹くし、芸術作品のように美しいのは確かだ。
 生涯に一度くらいは作り上げてみたいものです。

参考・参照

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