【解法】Reverse BUG

 Reverse BUG は「ナンプレの解はただ1つしかない」という前提で使用する特殊な解法です。
 既に盤面に書かれている数字を使います。
 正式な解法と言えるかどうかは微妙ですが、早解きをする場合に有用……ではないかも😅
 手順が結構メンドくさいんです。
 (難易度:★★★★★)

 【お詫び】
 セクションの unavoidable set の定義に関して。
 2024.11.21. 以前の解説では、「交換可能な数字配置」を unavoidable set と説明していました。
 しかし、正しくは数字配置ではなく「交換可能な数字配置を持つマスの集合」を unavoidable set と呼びます。
 お詫びして訂正いたします。

1.Reverse BUG の扱う unavoidable set

 通常、ナンプレには解は1つしかありません。
 これはルールで定められているわけではないですが、世に出ているナンプレはこの性質を必ず持っています。
 そのため、「解が複数存在してしまうような理屈はおかしい!」という考えは一理ある。
 Reverse BUG はその考えから生まれた解法です。

 解法を説明する前に、まずは「解が複数存在するとは何ぞや?」という話をしましょう。
 解法 Reverse BUG は unavoidable set という特殊なパターンで複数解を扱います。
 まずはそのパターンについて解説していきましょう。

図 1-1

 図1-1 を見てみましょう。
 ポツポツ散らばった黄色6マスに数字が入っていますね。
 黄色全体を見ると、次の状況になっています。

  • どの黄色マスにも数字1, 2どちらかが入っている。
  • 黄色マスの属するどの列やブロックを見ても、黄色マスは2つある。さらに、その2マスには数字1, 2が1個ずつ入っている。

 例えば、左端のタテ列には黄色マスがちょうど2つありますね。
 その2マスには数字1と2が1個ずつ入っている。
 これは、黄色マスの属する列・ブロックすべてに言えることです。

 この黄色6マス、実は、ある行為ができるんです。

図 1-2

 数字を交換しても完成図ができる!

 他のマスを全部埋めると、図1-2 左側のように完成図ができあがります。
 そこから黄色マスの数字1と2を交換すると、図1-2 右側のようになった。

 なんと、これも完成図になっていた!
 白マスの数字はそのままに、黄色6マスをいじるだけで別の完成図を作れるんですね。

 図1-2 のように、数字を交換してもまた完成図になれる。
 この黄色領域を unavoidable set と呼びます。
 図1-1 は黄色6マスで構成される unavoidable set です。

 実は、unavoidable set と複数解パターンの間には密接な関係があります。
 そして、その関係性から、唯一解に関して重要な性質を持っています。
 それを説明しましょう。

図 1-3

 今、この黄色6マスに数字は1つも入ってないとしましょう。
 この盤面、どういう状況になっているでしょうか?

あっ、複数解が発生してる!

 なんと、黄色6マスは複数解パターンになっちゃうんです。
 前図1-2 がちょうど2通りの解になっていますね。

 というわけで、唯一解のためには黄色領域を空っぽにしてはいけません。
 それを避ける手立てが必要です。
 具体的には、黄色領域のどこかにヒント数字を置く必要があるんです。

 もちろん、この話は黄色領域に限りません。
 どの unavoidable set にも当てはまります。

  • unavoidable set を空っぽにすると複数解パターンになる。
    それを避けるには、どの unavoidable set にもヒント数字が必要である。

 これが unavoidable set と複数解パターンの密接な関係です。

 どの unavoidable set にもヒント数字が必要である。
 これはナンプレが唯一解を持つための必須条件です。
 また、この必須条件は次のように言い換えることもできますね。

 これが unavoidable set の持つ重要な性質です。
 ヒント数字の有無、ここがすごく大事!

 また、この性質はナンプレを解く上でも決定的な違いを生みます。
 それも説明しましょう。

図 1-4

 図1-4、黄色6マスを見てみましょう。
 この6マスの数字はどれもヒント数字ではなく、解いている途中で書かれた数字だとしましょう。
 この unavoidable set は現れたらダメなんです。
 もし実戦で現れたなら、解いている最中にどこかでミスをしているはず!

 対して、ヒント数字のある unavoidable set は普通に存在します。
 これは 次図1-5 で具体例を示しましょう。

図 1-5

 図1-5。
 唯一解を持つナンプレを解いたら、黄色6マスに unavoidable set。
 複数解は生まれず、何も不都合はありません。

 ヒント数字のない unavoidable set は絶対にダメ。
 ヒント数字のある unavoidable set は普通にOK。
 唯一解ナンプレでは、このように大きな違いが出てきます。
 この点、注意しましょう。

 ヒント数字のない unavoidable set は1つも存在しない。
 これは解法 Reverse BUG を理解する上で必要な性質で、これをベースに論理展開されます。

 が、実はこれだけでは足りません。
 もう1つの大事な性質を unavoidable set は持っている!
 それをセクションで解説しましょう。
 実は、そこで述べるロジックが Reverse BUG では大活躍するんです。

2.unavoidable set は独りじゃない

 前セクションでは unavoidable set を紹介しました。
 「ヒント数字のない unavoidable set は存在しない」という性質がありましたね。
 実は、解法 Reverse BUG を使うためには、この性質を利用したロジックが1つ必要になるんです。
 それを解説しましょう。

図 2-1

 図2-1 を見てみましょう。
 完成図ですが、数字1と2にだけ注目していきます。

 まずは黄色6マス。
 前セクションで説明した通り、これは unavoidable set です。
 黄色マスの1と2を交換しても完成図ができますもんね。

 では、残りの数字1, 2はどうなんでしょう?
 赤色12マスです。
 ここで、ちょいと試しに赤色マスの1と2を交換してみましょうか。

図 2-2

 あら!
 これも完成図になってる!

 なんと、黄色マスだけかと思いきや、赤色マスも同じ性質を持っていた!
 赤色12マスも unavoidable set だったんですね。
 なんと、仲間がもう1人いたんです。

 一般的な話をしましょう。
 これが成り立つんです。

  • 数字a, bのみで構成される18マス未満の unavoidable set が見つかった時、残りのマスでも数字a, bの unavoidable set が必ず見つかる。

 2つの数字からなる unavoidable set は(18マス未満なら)必ず複数存在する。
 ここが重要です。

 unavoidable set クン、君は独りぼっちじゃないのさ。

図 2-3

 ここで、セクションを思い出しましょう。
 unavoidable set のマス全部が空きマスだと非常にマズいわけですね。
 ヒント数字のない unavoidable set は存在してはいけないから。
 ということは、黄色も赤色もヒント数字0個ではダメなんです。

  • どちらの unavoidable set もヒント数字を最低1個持つ。

 黄色&赤色、両方ともヒント数字を抱えなきゃいけないんですね。
 「両方とも」です。
 ここ、すっごく大事!

図 2-4

 逆に、もし片方の unavoidable set にしかヒント数字が存在しなかったとしたらどうなるか。
 例えば、赤色がヒント数字1, 2を独占していたとしたら……?

 もぅもぅ明らかですね。
 図2-4 の通りです。
 赤色の方は一意に決まって何の支障もないけれど、黄色の方は……?

 最終結論。
 これが成り立ちます。

  • 数字a, bで構成される18マス未満の unavoidable set は、ヒント数字a, bを独占してはならない。

 これが解法 Reverse BUG の核となるロジックです。

 小さな unavoidable set がヒント数字を独占してしまう。
 こういう状況はNGなんですね。
 そして、その状況になりかけている時、解法 Reverse BUG の出番がやってくるんです。

3.どういう解法?

図 3-1

 図3-1 を見てみましょう。
 問題図から少しだけ解き進めたところです。
 ヒント数字があちこちに散らばっていますが、ここでは2種類の数字に注目しましょう。
 3と6です。

 よく見たら、ヒント数字3と6はたった3カ所にしかありません。
 しかも、こういう状況です。

  • ヒント数字3と6は、すべて黄色マス内部にある。
  • マスAに数字3が入ると、黄色領域は unavoidable set になる。

 これはもぅ「もしマスAが3だとすると……?」な〜んて考えてみたくなっちゃう。
 そして、解法 Reverse BUG で解決の糸口が見えてきそうです。

図 3-2

 前図3-1 からはどういう結論になるんでしょう?
 こうなります。

  • マスAから候補数字3を除去できる。

 あら。
 「もしマスAが3だとすると……?」なんて言ってたら、その数字3が消えちゃうという😓

 なぜこういう結論になるんでしょう?
 それは、セクションで述べたロジックが理由です。
 そのロジックを 図3-2 に適用してみると……、

  • 数字3, 6で構成される18マス未満の unavoidable set は、ヒント数字3, 6を独占してはならない。

 A=3としてしまうと、黄色は unavoidable set になってヒント数字3, 6を独占しちゃう。こりゃぁマズい💦
 こういうわけですね。
 セクションのロジックを使えば、一発でわかります😄

 そのロジックを使わない解き方もちょいと解説してみます。
 次図3-3 以降で説明しましょう。

図 3-3

 「マスAに数字3が入る」と仮定したら、一体何が起こるのか?

 黄色4マスでは数字3, 6の unavoidable set ができました。
 ここで、図2-2 の話を思い出しましょう!
 黄色領域には別の仲間がいるんです。

  • 数字3, 6からなる unavoidable set は他の場所にも存在する。

 黄色は4マスだから、最大14個の数字3, 6からなる unavoidable set が盤面のどこかに必ずある。
 黄色マス以外の3と6は青色領域に入るから、その unavoidable set は青色の中に隠れていることは間違いない。
 今はその姿が見えないが、まぁ解き進めよう。
 さすれば、やがて姿を現すであろう……。

図 3-4

 だがしかし!
 この青色領域にヒント数字3と6はあるでしょうか?

なんと、1つもありません!

 これは何を意味するのか?
 解き進めていくと姿がハッキリするであろう unavoidable set は、もぅ……こういう状態になってしまっているんです。

  • 数字3, 6からなる unavoidable set なのに、ヒント数字3と6が1つもない。

 ああぁ、これはマズい!
 セクションで述べた通り、ヒント数字のない unavoidable set は存在してはならないのです。
 よって、「マスAに数字3が入る」という仮定は却下せざるを得なくなりました。

 図3-2 の結論通りになりましたね😊

4.もっと複雑なパターン

 次は、もっと複雑なパターンを紹介します。
 ヒマな時にでも軽くご覧ください😊

図 4-1

 図4-1 を見てみましょう。
 問題図から6マス埋まったところです。
 今回注目する数字は2と9です。

 この2種類の数字、すべて黄色領域の中にしかありません。
 しかも、マスAには候補数字9、マスBには候補数字2。
 いかにも「Reverse BUG を使え〜使え〜!」と言わんばかりの雰囲気が漂ってますね😅

図 4-2

 前図4-1 からは最終的にこうなります。

  • マスXに数字3が確定する。

 なぜこういう結論になるんでしょう?
 それを解説しましょう。

 まず、解法 Reverse BUG によって、こういう結果が得られます。

  • 「A=9 かつ B=2」は成り立たない。

 なぜか?
 もし仮にマスAに9、マスBに2を入れてしまうと、マズい状況に陥るからです。
 黄色8マスで unavoidable set ができあがるけれど、盤面に5つあるヒント数字2, 9を独占しちゃいますもんね。
 セクションのロジックが効いています。

図 4-3

 というわけで、次の少なくとも一方は成り立つことになりました。
 (両方成り立つ可能性もある)

  1. マスAから候補数字9が除去される。
  2. マスBから候補数字2が除去される。

 それぞれ話を進めてみましょう。
 a. の場合、マスAの候補数字は5, 7になりますね。
 すると、ブロック内部で2マスA, Cの2国同盟が発生!
 そのあおりを受けて、マスXには数字5も7も入れられなくなっちゃいました(図4-3)。

 b. の場合も同様です。
 マスBの候補数字は5, 7になり、ヨコ列内部では2マスB, Cの2国同盟が発生します。
 よって、マスXには数字5も7も入れられません。

 どちらにしろ、マスXに数字3が確定するわけですね。
 図4-2 の結論通りになりましたね😊

5.unavoidable set って盤面に何個あるの?

 ここからは余談です。
 数字2種類の unavoidable set、18マスなら1個だけ存在するし、18マス未満なら必ず複数存在するわけですね。
 ということは、盤面によっては unavoidable set の個数はまちまちだと言えます。
 じゃぁ、1枚の盤面に数字2種類の unavoidable set は何個存在できるんだろう?
 その最大値と最小値を考えてみたいと思います。

図 5-1

 まずは、最小値です。
 これは、次の状況の時に最も少なくなります。

  • すべての unavoidable set が18マスで構成されている。

 つまり、「どの数字ペアに対しても unavoidable set は1個しかない」という状態ですね。
 例えば、図5-1 の盤面はそういう状態になっています。

 この場合、unavoidable set の個数はいくつになるのか?
 数字ペア1組に対して set が1個対応するわけなので、9つの数字から2つを選ぶ場合の数と同じですね。

(最小値) = 929・82・1 = 36

 というわけで、最小値は36個でした😊

図 5-2

 次は最大値です。
 まず、特定の数字ペアに対する unavoidable set は最大何個できるのかを考えてみます。
 例えば、数字1, 2の unavoidable set は最大何個作れるんでしょう?

 答えは4個です。
 図5-2 のような形ですね。
 赤色、青色、黄色、緑色。全部で4つ。

 ペア1組あたり最大4個の set ができる。
 ということは、unavoidable set の最大個数は次の式で求まりそう。

(最大値) = 92 × 4 = 36×4 = 144

 ただ、困ったことがひとつ。
 9×9の狭い空間に全ペア4個ずつ詰め込めるんだろうか……?
 そんな都合の良い完成図は無理かもしれません。
 だから、理論上は144個が最大ということにしておきましょう😊

 ここからは駄文です。
 Reverse BUG はヒント数字が決め手となる解法です。
 そこで、ヒント数字についてちょいと無駄話をしてみます。

 複数解を防ぐためには、どの unavoidable set にもヒント数字1個は必要です。
 しかし、世に出ているナンプレにはヒント数字が24個程度しかありません。
 あれ? unavoidable set は最低36個あるのにヒント数字は24個程度で済んでいる?
 36個じゃないのが不思議なところ。
 あ、数字1個が複数の set のヒント数字を兼ねていてもおかしくはないから、たいして不思議ではないのか。

 ヒント数字の個数に関して、私の個人的な感覚をひとつ。
 なんとな〜く「24個と23個の間には壁がある」と感じています。

 中級ナンプレを制作する時、私はヒント24〜25個で作ることがほとんどです。
 なぜかと言うと、24個以上だと制作に苦労しないから。
 特に苦もなく問題ができあがる。
 ところが、ヒント23個で作ろうとすると一気に制作難易度が跳ね上がってしまうんです。

 ヒント23個だと、あと一歩で完成というところまでは行ける。
 だけど、そこからマスを埋めきれない。ヒント数字が足りなくて。
 あと一歩だからヒント数字を変えればうまくいきそうなんだけど、そうすると今度は別のマスが埋まらない。
 さらにヒント数字を変えても別のマスが埋まらない。
 どう試しても「あと一歩」。ゴールが見えているのにゴールテープが遠い。
 結局あきらめてヒント24個で作り直す。
 もどかしい思いばかりするんです。

 単純にヒント数字が少ないほどナンプレは完成しにくくなります。
 逆に、めちゃくちゃ多ければ鼻ほじりながらでも完成できる。
 そう考えると、ヒント数に関して「制作しやすい/しにくい」の境界線はどこかにあるだろう。
 その具体的な位置が「24個と23個の間」なのかなぁと考えています。

 これは私の経験則であって、何の根拠もありません。
 24と23に本質的な違いはないでしょうし。
 でも、作りやすさが本当に段違いで変わる。これがもぅ不思議でしょうがない。
 個人的に感じる『ナンプレの不思議』です。

 以上、とりとめもない駄文で失礼しました。

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