2.unavoidable set は独りじゃない
前セクションでは unavoidable set を紹介しました。
「ヒント数字のない unavoidable set は存在しない」という性質がありましたね。
実は、解法 Reverse BUG を使うためには、この性質を利用したロジックが1つ必要になるんです。
それを解説しましょう。
図2-1 を見てみましょう。
完成図ですが、数字1と2にだけ注目していきます。
まずは黄色6マス。
前セクション1で説明した通り、これは unavoidable set です。
黄色マスの1と2を交換しても完成図ができますもんね。
では、残りの数字1, 2はどうなんでしょう?
赤色12マスです。
ここで、ちょいと試しに赤色マスの1と2を交換してみましょうか。
ここで、セクション1を思い出しましょう。
unavoidable set のマス全部が空きマスだと非常にマズいわけですね。
ヒント数字のない unavoidable set は存在してはいけないから。
ということは、黄色も赤色もヒント数字0個ではダメなんです。
- どちらの unavoidable set もヒント数字を最低1個持つ。
黄色&赤色、両方ともヒント数字を抱えなきゃいけないんですね。
「両方とも」です。
ここ、すっごく大事!
逆に、もし片方の unavoidable set にしかヒント数字が存在しなかったとしたらどうなるか。
例えば、赤色がヒント数字1, 2を独占していたとしたら……?
もぅもぅ明らかですね。
図2-4 の通りです。
赤色の方は一意に決まって何の支障もないけれど、黄色の方は……?
最終結論。
これが成り立ちます。
- 数字a, bで構成される18マス未満の unavoidable set は、ヒント数字a, bを独占してはならない。
これが解法 Reverse BUG の核となるロジックです。
小さな unavoidable set がヒント数字を独占してしまう。
こういう状況はNGなんですね。
そして、その状況になりかけている時、解法 Reverse BUG の出番がやってくるんです。
3.どういう解法?
図3-1 を見てみましょう。
問題図から少しだけ解き進めたところです。
ヒント数字があちこちに散らばっていますが、ここでは2種類の数字に注目しましょう。
3と6です。
よく見たら、ヒント数字3と6はたった3カ所にしかありません。
しかも、こういう状況です。
- ヒント数字3と6は、すべて黄色マス内部にある。
- マスAに数字3が入ると、黄色領域は unavoidable set になる。
これはもぅ「もしマスAが3だとすると……?」な〜んて考えてみたくなっちゃう。
そして、解法 Reverse BUG で解決の糸口が見えてきそうです。
前図3-1 からはどういう結論になるんでしょう?
こうなります。
- マスAから候補数字3を除去できる。
あら。
「もしマスAが3だとすると……?」なんて言ってたら、その数字3が消えちゃうという😓
なぜこういう結論になるんでしょう?
それは、セクション2で述べたロジックが理由です。
そのロジックを 図3-2 に適用してみると……、
- 数字3, 6で構成される18マス未満の unavoidable set は、ヒント数字3, 6を独占してはならない。
A=3としてしまうと、黄色は unavoidable set になってヒント数字3, 6を独占しちゃう。こりゃぁマズい💦
こういうわけですね。
セクション2のロジックを使えば、一発でわかります😄
そのロジックを使わない解き方もちょいと解説してみます。
次図3-3 以降で説明しましょう。
「マスAに数字3が入る」と仮定したら、一体何が起こるのか?
黄色4マスでは数字3, 6の unavoidable set ができました。
ここで、図2-2 の話を思い出しましょう!
黄色領域には別の仲間がいるんです。
- 数字3, 6からなる unavoidable set は他の場所にも存在する。
黄色は4マスだから、最大14個の数字3, 6からなる unavoidable set が盤面のどこかに必ずある。
黄色マス以外の3と6は青色領域に入るから、その unavoidable set は青色の中に隠れていることは間違いない。
今はその姿が見えないが、まぁ解き進めよう。
さすれば、やがて姿を現すであろう……。
だがしかし!
この青色領域にヒント数字3と6はあるでしょうか?
なんと、1つもありません!
これは何を意味するのか?
解き進めていくと姿がハッキリするであろう unavoidable set は、もぅ……こういう状態になってしまっているんです。
- 数字3, 6からなる unavoidable set なのに、ヒント数字3と6が1つもない。
ああぁ、これはマズい!
セクション1で述べた通り、ヒント数字のない unavoidable set は存在してはならないのです。
よって、「マスAに数字3が入る」という仮定は却下せざるを得なくなりました。
図3-2 の結論通りになりましたね😊
4.もっと複雑なパターン
次は、もっと複雑なパターンを紹介します。
ヒマな時にでも軽くご覧ください😊
図4-1 を見てみましょう。
問題図から6マス埋まったところです。
今回注目する数字は2と9です。
この2種類の数字、すべて黄色領域の中にしかありません。
しかも、マスAには候補数字9、マスBには候補数字2。
いかにも「Reverse BUG を使え〜使え〜!」と言わんばかりの雰囲気が漂ってますね😅
前図4-1 からは最終的にこうなります。
- マスXに数字3が確定する。
なぜこういう結論になるんでしょう?
それを解説しましょう。
まず、解法 Reverse BUG によって、こういう結果が得られます。
- 「A=9 かつ B=2」は成り立たない。
なぜか?
もし仮にマスAに9、マスBに2を入れてしまうと、マズい状況に陥るからです。
黄色8マスで unavoidable set ができあがるけれど、盤面に5つあるヒント数字2, 9を独占しちゃいますもんね。
セクション2のロジックが効いています。
というわけで、次の少なくとも一方は成り立つことになりました。
(両方成り立つ可能性もある)
- マスAから候補数字9が除去される。
- マスBから候補数字2が除去される。
それぞれ話を進めてみましょう。
a. の場合、マスAの候補数字は5, 7になりますね。
すると、ブロック内部で2マスA, Cの2国同盟が発生!
そのあおりを受けて、マスXには数字5も7も入れられなくなっちゃいました(図4-3)。
b. の場合も同様です。
マスBの候補数字は5, 7になり、ヨコ列内部では2マスB, Cの2国同盟が発生します。
よって、マスXには数字5も7も入れられません。
どちらにしろ、マスXに数字3が確定するわけですね。
図4-2 の結論通りになりましたね😊
5.unavoidable set って盤面に何個あるの?
ここからは余談です。
数字2種類の unavoidable set、18マスなら1個だけ存在するし、18マス未満なら必ず複数存在するわけですね。
ということは、盤面によっては unavoidable set の個数はまちまちだと言えます。
じゃぁ、1枚の盤面に数字2種類の unavoidable set は何個存在できるんだろう?
その最大値と最小値を考えてみたいと思います。
まずは、最小値です。
これは、次の状況の時に最も少なくなります。
- すべての unavoidable set が18マスで構成されている。
つまり、「どの数字ペアに対しても unavoidable set は1個しかない」という状態ですね。
例えば、図5-1 の盤面はそういう状態になっています。
この場合、unavoidable set の個数はいくつになるのか?
数字ペア1組に対して set が1個対応するわけなので、9つの数字から2つを選ぶ場合の数と同じですね。
というわけで、最小値は36個でした😊
次は最大値です。
まず、特定の数字ペアに対する unavoidable set は最大何個できるのかを考えてみます。
例えば、数字1, 2の unavoidable set は最大何個作れるんでしょう?
答えは4個です。
図5-2 のような形ですね。
赤色、青色、黄色、緑色。全部で4つ。
ペア1組あたり最大4個の set ができる。
ということは、unavoidable set の最大個数は次の式で求まりそう。
ただ、困ったことがひとつ。
9×9の狭い空間に全ペア4個ずつ詰め込めるんだろうか……?
そんな都合の良い完成図は無理かもしれません。
だから、理論上は144個が最大ということにしておきましょう😊
ここからは駄文です。
Reverse BUG はヒント数字が決め手となる解法です。
そこで、ヒント数字についてちょいと無駄話をしてみます。
複数解を防ぐためには、どの unavoidable set にもヒント数字1個は必要です。
しかし、世に出ているナンプレにはヒント数字が24個程度しかありません。
あれ? unavoidable set は最低36個あるのにヒント数字は24個程度で済んでいる?
36個じゃないのが不思議なところ。
あ、数字1個が複数の set のヒント数字を兼ねていてもおかしくはないから、たいして不思議ではないのか。
ヒント数字の個数に関して、私の個人的な感覚をひとつ。
なんとな〜く「24個と23個の間には壁がある」と感じています。
中級ナンプレを制作する時、私はヒント24〜25個で作ることがほとんどです。
なぜかと言うと、24個以上だと制作に苦労しないから。
特に苦もなく問題ができあがる。
ところが、ヒント23個で作ろうとすると一気に制作難易度が跳ね上がってしまうんです。
ヒント23個だと、あと一歩で完成というところまでは行ける。
だけど、そこからマスを埋めきれない。ヒント数字が足りなくて。
あと一歩だからヒント数字を変えればうまくいきそうなんだけど、そうすると今度は別のマスが埋まらない。
さらにヒント数字を変えても別のマスが埋まらない。
どう試しても「あと一歩」。ゴールが見えているのにゴールテープが遠い。
結局あきらめてヒント24個で作り直す。
もどかしい思いばかりするんです。
単純にヒント数字が少ないほどナンプレは完成しにくくなります。
逆に、めちゃくちゃ多ければ鼻ほじりながらでも完成できる。
そう考えると、ヒント数に関して「制作しやすい/しにくい」の境界線はどこかにあるだろう。
その具体的な位置が「24個と23個の間」なのかなぁと考えています。
これは私の経験則であって、何の根拠もありません。
24と23に本質的な違いはないでしょうし。
でも、作りやすさが本当に段違いで変わる。これがもぅ不思議でしょうがない。
個人的に感じる『ナンプレの不思議』です。
以上、とりとめもない駄文で失礼しました。
更新履歴
- 2022. 2. 5.
- 新規公開。
- 2023. 3.31.
- ページ冒頭に難易度表記を追加。
- 2024.11.22.
- 内容を精査し、文章の一部を加筆・修正。
- セクション1の unavoidable set の定義が間違っていたので、お詫びとともに訂正。