1.Unique Rectangle の扱う複数解パターン
通常、ナンプレには解は1つしかありません。
これはルールで定められているわけではないですが、世に出ているナンプレはこの性質を必ず持っています。
そのため、「解が複数存在してしまうような理屈はおかしい!」という考えは一理ある。
Unique Rectangle はその考えから生まれた解法です。
解法を説明する前に、まずは「解が複数存在するとは何ぞや?」という話をしましょう。
ナンプレには、複数解の避けられないパターンが存在します。
パターンの形はさまざまですが、当ページでは Unique Rectangle に絞って解説していきます。
図1-1 を見てみましょう。
黄色4マスが矩形状に並んでいますね。
この4マスは次の状況になっています。
- 黄色4マスは、タテ2列・ヨコ2列・ブロック2個にのみ属している。
- どの黄色マスも候補数字は2つだけ。しかも、すべて同じ。
黄色マスの属するヨコ列は2つ(2行目と4行目)。
黄色マスの属するタテ列は2つ(2列目と3列目)。
黄色マスの属するブロックは2つ(左上隅とそのすぐ下)。
そして、どの黄色マスも数字1と2しか入れられません。
ナンプレを解く上で 前図1-1 のような箇所があると、不都合が生じます。
最後まで解き終えることができない!
一応、うまいこと解き進められれば、図1-2 のように 77マスまでなら数字で埋められるかもしれません。
ところが、これ以上マスが埋まらない。
どうしてもここから先へ進めない!
それもそのはずで、前図1-2 の状況からは完成図を2通り作ることができるんです。
図1-3 のように。
黄色マスのどれか1つに数字1を入れても数字2を入れても完成できてしまう……。
結局、図1-1 の状況が生まれた時点で、そのナンプレは複数解を免れないんですね。
図1-1 の黄色4マス、これを 複数解パターン と呼びます。
「このマスはこの数字で確定する!」
これが最後の1マスまで続くから、ナンプレは完成まで解き進めることができる。
ところが、盤面に複数解パターンができるとその流れは途絶えてしまう。
どんなに解き進めたとしても、結局は 図1-2 のような状況に陥って解けなくなってしまう……。
解けないことがわかると、解く意欲が急激に冷める。
解けた達成感のないナンプレなんて解く意味がありません。
そういう状況を避けるため、ナンプレ製作者は必ず唯一解を持つように作っています。
そのようなナンプレを解いている時、複数解パターンが現れることは絶対にありません。
したがって、複数解パターンは必ず間接的な使い方をします。
- ナンプレ盤面に複数解パターンが現れそうになったら、それを避けよう!
この使い方を踏まえつつ、セクション2では例を交えて解説しましょう。
2.Unique Rectangle
複数解パターンを利用した解法として、Unique Rectangle があります。
これは、「なんか複数解パターンが現れそう〜」な4マスに対する解法です。
例が豊富にありますが、当ページでは4つ紹介します。
まずは簡単な例を。
図2-1、矩形状に並んだ黄色4マスを見てみましょう。
この4マスには候補数字3と7がありますね。
そして、マスAにだけ候補数字9もオマケで付いています。
この候補数字9のように、複数解パターンに直接関わらない候補数字のことをここでは オマケ候補 と呼ぶことにしましょう。
この場合、こういう結論になります。
- マスAに数字9が確定する。
なぜでしょう?
それは、もしマスAに数字9が入らないと仮定すると、図1-1 で紹介した複数解パターンが現れてしまうからです。
それは避けなければいけないから、マスAには9を入れなければいけないんです。
図2-1 の場合はマスAのオマケ候補が9しかないので、すぐにマスAに9が確定しました。
一般には「候補数字3と7が複数解パターンを作っちゃうから、マスAから候補数字3も7も除去される」と解釈すると良いでしょう。
2つめはこんな感じ。
前図2-1 と同様に、黄色4マスが矩形状に並んでいます。
共通の候補数字は2と6。
そして、2マスA, Bには候補数字8もオマケで付いています。
この場合、こういう結論になります。
- 2マスA, Bと列やブロックを共有しているマスから候補数字8を除去できる。
図2-2 だと、×印の箇所です。
これらの候補数字8が除去されます。
なぜかと言うと、もしマスA, B両方とも候補数字8を除去してしまうと、複数解パターンが現れてしまうからです。
それは避けなければいけない。よって、マスA, Bのどちらかに必ず8が入ると考えなければいけない。
したがって、A, Bの属するタテ列とブロックから候補数字8が大量除去されることになるんです。
例をもうひとつ!
今度はだいぶ複雑です。
同様に黄色4マスが矩形状。共通の候補数字は1と9です。
2マスA, Bのオマケ候補は3, 5, 7。
この場合の結論はこうなります。
- オマケ候補3, 5, 7を全部除去できるマスが生じる。
図2-3 のミソは2マスC, Dの候補数字も3, 5, 7だということ。
A, Bのオマケ候補とまったく同じなんです。
複数解パターンを避けるためには、「マスAに3か5が入る」「マスBに3か7が入る」のどちらかが必要です。
前者の場合、2マスA, Dで数字3と5の2国同盟ができ、そのおかげでマスCに7が確定します。A, C, Dの3マスを3, 5, 7が占拠することになります。
後者の場合、3マスB, C, Dで3国同盟ができ、その3マスを3, 5, 7が占拠することになります。
どちらにしても、上から2つめのヨコ列において3マスに数字3, 5, 7が占拠してしまう形ができあがります。
よって、右端の2マスには3も5も7も入れられなくなるんです。
これでラスト!
この例は次セクション3の unavoidable set が根拠になるので、話が前後しちゃいます。ごめんなさい💦
図2-4、同様に黄色4マスが矩形状。
共通の候補数字は5と9です。
今回の結論はこうなります。
- 2マスC, Dから候補数字9を除去できる。
今回はオマケ候補は重要ではなく、候補数字5が重要です。
2マスC, Dの属するタテ列(またはブロック)を見ると、5の入るマスはC, Dしかありません。
ここで、C=5の場合を考えてみます。
この時 A=9, B=5 も確定し、3マスA〜Cに9, 5, 5が並ぶ。
ということは、もしマスDに数字9が入ったとしたら……ヒント数字のない unavoidable set ができてしまう!
それは避けなきゃいけないから、D≠9。
もとより C≠9 なので、2マスC, Dに数字9は入りません。
D=5の場合も同様で、2マスC, Dに数字9は入りません。
どちらにせよ、上記の結論に至るわけです。
上記の4つの他にも Unique Rectangle にはいろんな形があります。
他の解説サイトで取り上げていることがあるので、興味があれば探してみてください。
4.Hidden Unique Rectangle
セクション2の Unique Rectangle では、オマケ候補数字のないマスが2個以上ありました。
割と「候補数字が剥き出しになっている」ような、わかりやすい見た目でしたね。
打って変わって、今度は「候補数字が隠れている」感のある Unique Rectangle を紹介します。
3マスにオマケ候補が散らばっていたりして、メインの候補数字がカモフラージュされているような見た目をしています。
図4-1、矩形状に並んだ黄色4マスA〜Dを見てみましょう。
その4マスはこういう状況です。
- 黄色4マス共通の候補数字が2つある。図4-1 だと2と8。
- オマケ候補のないマスが最低1つあり、他の3マスのうち2マス以上がオマケ候補を持っている。
この時、注目すべきマスは2つあります。
オマケ候補を持たないマスと、その対角に位置するマスです。
図4-1 だと、マスDとAの2つですね。
この2マスは次の特徴を持っています。
- マスDにはオマケ候補が1つもない。
- マスAの属するヨコ列(青色)において、候補数字8はA, Bにしか存在しない。
- マスAの属するタテ列(赤色)において、候補数字8はA, Cにしか存在しない。
さて、この状況からどういう結論が得られるんでしょう?
こうなります。
- マスAから候補数字2を除去できる。
なぜでしょう?
それは、マスAに数字2を入れると「ヒント数字のない unavoidable set」ができてしまうからなんです。
だからマスAに数字2を入れてはダメ、というわけです。
実際にそうなるのか、確かめてみましょう。
今、マスAに数字2が入ったと仮定しましょう。
すると、Aの属するヨコ列では数字8はマスBにしか入らない。
Aの属するタテ列では数字8はマスCにしか入らない。
その後、マスDには自動的に数字2が確定。
結果、黄色4マスに2882が並んだ。
図4-3 の通りになりました。
……あれ?
この4マス、unavoidable set じゃん!
しかも、どれもヒント数字ではない!
そうなんです。
NGの状況が起きてしまった。
したがって、「マスAに数字2が入る」という仮定は間違いだとわかりました。
前図4-2 の結論通りになりましたね😊
5.Avoidable Rectangle
セクション24では、複数解パターンが現れそうな4マスに数字は1つも入っていませんでした。
このセクションでは、その4マスのいくつかに数字が確定している形の解法を紹介します。
「Avoidable」とあるように、すでに確定した数字の配置を見て複数解を避けるための解法です。
ところが……。
実は、ナンプレを普通に解いている時、解法 Avoidable Rectangle を使う状況はまず訪れません。
唯一解を根拠とする別の解法を使い、まずは数字を露出させる必要がある。
最初に下準備をしなきゃいけません。
なんか面倒くさい😅
ここでは、Unique Rectangle で下準備をしてから Avoidable Rectangle を使います。
図5-1 は、解いている途中のナンプレ盤面です。
問題図に最初からあるヒント数字は黒色、解いている途中で判明した数字は青色で示しています。
この盤面を使って Avoidable Rectangle を解説しましょう。
とりあえず、先に結論を言っちゃいます。
- マスAに数字8は入らない。
理由は、赤色4マスに Avoidable Rectangle を適用できるから。
あっ、見ての通り今はまだです😅
別の場所で Unique Rectangle を使うと赤色4マスに準備が整うので、まずは下準備といきましょう!
では下準備。
ところ変わって、図5-2 の黄色4マス。
なんと、ここに Unique Rectangle が隠れてた!
図2-1 と同じ理屈で数字が確定しますね。
- マスBに数字8が確定する。
黄色4マスを複数解パターンにしないよう、数字8が入ります。
Unique Rectangle のおかげで、ちょっと解き進みました。
さぁ、ここで赤色4マスに戻りましょう。
なんと、3マスが8, 4, 4で埋まってた!
ここで解法 Avoidable Rectangle が使えるんです。
- マスAに数字8は入らない。
理由は、マスAに数字8が入ると「ヒント数字のない unavoidable set」ができあがってしまうからですね。
それを避けるために、マスAから候補数字8を除去。
結果、数字2が確定しました。
めでたし😊
既に埋まっている8, 4, 4はすべて問題図にはなかった数字。
これがこの解法の大事なところ。
もし仮に赤色4マスのどこかにヒント数字があったなら、話はまったく違います。8448の形は何もおかしくはなく、Avoidable Rectangle は使えません。
ナンプレは解を1つしか持たないというのが原則です。
当然、製作者はそれを心得ていて、複数解ができないようにナンプレを製作しています。
だから、そのことをご存じの方々は次のような推測をするかもしれません。
- 図5-3 の時点でマスAに8が入るようには作られていないはず!
- あるいは、問題図の時点でどれかの赤色マスにヒント数字4や8を初期配置しているはず!
数字の並びから製作者の意図を推測する。
あまりにも特殊な解き方で、Avoidable Rectangle ならではの解き方かもしれません。
「製作者側の意図すら利用してナンプレを解く」ことの是非はおいておくとして、こういう解き方も一応あるんですね〜😄