【解法】Unique Rectangle

 Unique Rectangle は「ナンプレの解はただ1つしかない」という前提で使用する特殊な解法です。
 正当な解法と言えるかどうかは微妙ですが、早解きをする場合に有用です。
 また、Hidden Unique Rectangle と Avoidable Rectangle の解法も紹介します。
 (難易度:★★★★ 〜 ★★★★★)

1.Unique Rectangle の扱う複数解パターン

 通常、ナンプレには解は1つしかありません。
 これはルールで定められているわけではないですが、世に出ているナンプレはこの性質を必ず持っています。
 そのため、「解が複数存在してしまうような理屈はおかしい!」という考えは一理ある。
 Unique Rectangle はその考えから生まれた解法です。

 解法を説明する前に、まずは「解が複数存在するとは何ぞや?」という話をしましょう。
 ナンプレには、複数解の避けられないパターンが存在します。
 パターンの形はさまざまですが、当ページでは Unique Rectangle に絞って解説していきます。

図 1-1

 図1-1 を見てみましょう。
 黄色4マスが矩形状に並んでいますね。
 この4マスは次の状況になっています。

  • 黄色4マスは、タテ2列・ヨコ2列・ブロック2個にのみ属している。
  • どの黄色マスも候補数字は2つだけ。しかも、すべて同じ。

 黄色マスの属するヨコ列は2つ(2行目と4行目)。
 黄色マスの属するタテ列は2つ(2列目と3列目)。
 黄色マスの属するブロックは2つ(左上隅とそのすぐ下)。
 そして、どの黄色マスも数字1と2しか入れられません。

図 1-2

 ナンプレを解く上で 前図1-1 のような箇所があると、不都合が生じます。

最後まで解き終えることができない!

 一応、うまいこと解き進められれば、図1-2 のように 77マスまでなら数字で埋められるかもしれません。
 ところが、これ以上マスが埋まらない。
 どうしてもここから先へ進めない!

図 1-3

 それもそのはずで、前図1-2 の状況からは完成図を2通り作ることができるんです。
 図1-3 のように。
 黄色マスのどれか1つに数字1を入れても数字2を入れても完成できてしまう……。

 結局、図1-1 の状況が生まれた時点で、そのナンプレは複数解を免れないんですね。
 図1-1 の黄色4マス、これを 複数解パターン と呼びます。

 「このマスはこの数字で確定する!」
 これが最後の1マスまで続くから、ナンプレは完成まで解き進めることができる。
 ところが、盤面に複数解パターンができるとその流れは途絶えてしまう。
 どんなに解き進めたとしても、結局は 図1-2 のような状況に陥って解けなくなってしまう……。

 解けないことがわかると、解く意欲が急激に冷める。
 解けた達成感のないナンプレなんて解く意味がありません。
 そういう状況を避けるため、ナンプレ製作者は必ず唯一解を持つように作っています。
 そのようなナンプレを解いている時、複数解パターンが現れることは絶対にありません。

 したがって、複数解パターンは必ず間接的な使い方をします。

 この使い方を踏まえつつ、セクションでは例を交えて解説しましょう。

2.Unique Rectangle

 複数解パターンを利用した解法として、Unique Rectangle があります。
 これは、「なんか複数解パターンが現れそう〜」な4マスに対する解法です。
 例が豊富にありますが、当ページでは4つ紹介します。

図 2-1

 まずは簡単な例を。
 図2-1、矩形状に並んだ黄色4マスを見てみましょう。
 この4マスには候補数字3と7がありますね。
 そして、マスAにだけ候補数字9もオマケで付いています。

 この候補数字9のように、複数解パターンに直接関わらない候補数字のことをここでは オマケ候補 と呼ぶことにしましょう。

 この場合、こういう結論になります。

  • マスAに数字9が確定する。

 なぜでしょう?
 それは、もしマスAに数字9が入らないと仮定すると、図1-1 で紹介した複数解パターンが現れてしまうからです。
 それは避けなければいけないから、マスAには9を入れなければいけないんです。

 図2-1 の場合はマスAのオマケ候補が9しかないので、すぐにマスAに9が確定しました。
 一般には「候補数字3と7が複数解パターンを作っちゃうから、マスAから候補数字3も7も除去される」と解釈すると良いでしょう。

図 2-2

 2つめはこんな感じ。
 前図2-1 と同様に、黄色4マスが矩形状に並んでいます。
 共通の候補数字は2と6。
 そして、2マスA, Bには候補数字8もオマケで付いています。

 この場合、こういう結論になります。

  • 2マスA, Bと列やブロックを共有しているマスから候補数字8を除去できる。

 図2-2 だと、×印の箇所です。
 これらの候補数字8が除去されます。
 なぜかと言うと、もしマスA, B両方とも候補数字8を除去してしまうと、複数解パターンが現れてしまうからです。
 それは避けなければいけない。よって、マスA, Bのどちらかに必ず8が入ると考えなければいけない。

 したがって、A, Bの属するタテ列とブロックから候補数字8が大量除去されることになるんです。

図 2-3

 例をもうひとつ!
 今度はだいぶ複雑です。
 同様に黄色4マスが矩形状。共通の候補数字は1と9です。
 2マスA, Bのオマケ候補は3, 5, 7。
 この場合の結論はこうなります。

  • オマケ候補3, 5, 7を全部除去できるマスが生じる。

 図2-3 のミソは2マスC, Dの候補数字も3, 5, 7だということ。
 A, Bのオマケ候補とまったく同じなんです。

 複数解パターンを避けるためには、「マスAに3か5が入る」「マスBに3か7が入る」のどちらかが必要です。
 前者の場合、2マスA, Dで数字3と5の2国同盟ができ、そのおかげでマスCに7が確定します。A, C, Dの3マスを3, 5, 7が占拠することになります。
 後者の場合、3マスB, C, Dで3国同盟ができ、その3マスを3, 5, 7が占拠することになります。
 どちらにしても、上から2つめのヨコ列において3マスに数字3, 5, 7が占拠してしまう形ができあがります。

 よって、右端の2マスには3も5も7も入れられなくなるんです。

図 2-4

 これでラスト!
 この例は次セクションの unavoidable set が根拠になるので、話が前後しちゃいます。ごめんなさい💦

 図2-4、同様に黄色4マスが矩形状。
 共通の候補数字は5と9です。
 今回の結論はこうなります。

  • 2マスC, Dから候補数字9を除去できる。

 今回はオマケ候補は重要ではなく、候補数字5が重要です。
 2マスC, Dの属するタテ列(またはブロック)を見ると、5の入るマスはC, Dしかありません。

 ここで、C=5の場合を考えてみます。
 この時 A=9, B=5 も確定し、3マスA〜Cに9, 5, 5が並ぶ。
 ということは、もしマスDに数字9が入ったとしたら……ヒント数字のない unavoidable set ができてしまう!
 それは避けなきゃいけないから、D≠9。
 もとより C≠9 なので、2マスC, Dに数字9は入りません。

 D=5の場合も同様で、2マスC, Dに数字9は入りません。
 どちらにせよ、上記の結論に至るわけです。

 上記の4つの他にも Unique Rectangle にはいろんな形があります。
 他の解説サイトで取り上げていることがあるので、興味があれば探してみてください。

3.もう1つのパターン・unavoidable set

 実は、複数解に関してもう1つのパターンがあるんです。
 そのパターンを紹介しましょう!

図 3-1

 図1-3 をもう一度(図3-1)。
 図1-3 の解説では、2通りの完成図ができて複数解を持つと述べました。
 ここでは、別の見方をしてみましょう。
 黄色4マスに着目すると、こういう言い方もできるんです。

  • 黄色4マスの数字1と2を交換すると、別の完成図ができる。

 今回は、こういう数字の並びを持つマス達が主題です。

 図3-1 の黄色マスのように、数字を交換してもまた完成図になれる。
 この黄色領域を unavoidable set と呼びます。
 図3-1 は黄色6マスで構成される unavoidable set です。

 実は、unavoidable set と複数解パターンの間には密接な関係があります。
 そして、その関係性から、唯一解に関して重要な性質を持っています。
 それを説明しましょう。

図 3-2

 今、この黄色4マスに数字は1つも入ってないとしましょう。
 この盤面、どういう状況になっているでしょうか?

あっ、複数解が発生しちゃってる……。

 なんと、黄色4マスは複数解パターンになっちゃうんです。
 前図3-1 がちょうど2通りの解になっていますね。

 というわけで、唯一解のためには黄色領域を空っぽにしてはいけません。
 それを避ける手立てが必要です。
 具体的には、黄色領域のどこかにヒント数字を置く必要があるんです。

 もちろん、この話は黄色領域に限りません。
 すべての unavoidable set に当てはまります。

  • unavoidable set を空っぽにすると複数解パターンになる。
    それを避けるには、どの unavoidable set にもヒント数字が必要である。

 これが unavoidable set と複数解パターンの密接な関係です。

 どの unavoidable set にもヒント数字が必要である。
 これはナンプレが唯一解を持つための必須条件です。
 また、この必須条件は次のように言い換えることもできますね。

 これが unavoidable set の持つ重要な性質です。
 ヒント数字の有無、ここがすごく大事!

 また、この性質はナンプレを解く上でも決定的な違いを生みます。
 それも説明しましょう。

図 3-3

 図3-3、unavoidable set を2つ用意しました。
 この2つには大きな違いがあります。

 まずは左上。
 黄色4マスのどの数字もヒント数字ではなく、解いている途中で書かれた数字だとしましょう。
 こういう unavoidable set が現れてはならないんです。
 もし実戦で現れたなら、解いている最中にどこかでミスをしているはず!

 一方、右下の4マスにはヒント数字(黒色)があったとしましょう。
 こういう unavoidable set は現れてもOKです。
 この4マスからは複数解は生まれず、何の不都合もありません。

図 3-4

 実際、ヒント数字付きの unavoidable set は普通に存在します。
 図3-4 とか。
 唯一解を持つナンプレを解いたら、黄色4マスに現れた!

 ヒント数字のない unavoidable set は絶対にダメ。
 ヒント数字のある unavoidable set は普通にOK。
 唯一解ナンプレでは、このように大きな違いが出てきます。
 この点、注意しましょう。

 以降のセクションでは、このことを利用した解法を2つ紹介しましょう!
 セクションでは Hidden Unique Rectangle を解説します。
 セクションでは Avoidable Rectangle を解説します。

4.Hidden Unique Rectangle

 セクションの Unique Rectangle では、オマケ候補数字のないマスが2個以上ありました。
 割と「候補数字が剥き出しになっている」ような、わかりやすい見た目でしたね。

 打って変わって、今度は「候補数字が隠れている」感のある Unique Rectangle を紹介します。
 3マスにオマケ候補が散らばっていたりして、メインの候補数字がカモフラージュされているような見た目をしています。

図 4-1

 図4-1、矩形状に並んだ黄色4マスA〜Dを見てみましょう。
 その4マスはこういう状況です。

  • 黄色4マス共通の候補数字が2つある。図4-1 だと2と8。
  • オマケ候補のないマスが最低1つあり、他の3マスのうち2マス以上がオマケ候補を持っている。

 この時、注目すべきマスは2つあります。
 オマケ候補を持たないマスと、その対角に位置するマスです。
 図4-1 だと、マスDとAの2つですね。
 この2マスは次の特徴を持っています。

  • マスDにはオマケ候補が1つもない。
  • マスAの属するヨコ列(青色)において、候補数字8はA, Bにしか存在しない。
  • マスAの属するタテ列(赤色)において、候補数字8はA, Cにしか存在しない。
図 4-2

 さて、この状況からどういう結論が得られるんでしょう?
 こうなります。

  • マスAから候補数字2を除去できる。

 なぜでしょう?
 それは、マスAに数字2を入れると「ヒント数字のない unavoidable set」ができてしまうからなんです。
 だからマスAに数字2を入れてはダメ、というわけです。

 実際にそうなるのか、確かめてみましょう。

図 4-3

 今、マスAに数字2が入ったと仮定しましょう。
 すると、Aの属するヨコ列では数字8はマスBにしか入らない。
 Aの属するタテ列では数字8はマスCにしか入らない。
 その後、マスDには自動的に数字2が確定。
 結果、黄色4マスに2882が並んだ。
 図4-3 の通りになりました。

 ……あれ?
 この4マス、unavoidable set じゃん!
 しかも、どれもヒント数字ではない!

 そうなんです。
 NGの状況が起きてしまった。
 したがって、「マスAに数字2が入る」という仮定は間違いだとわかりました。

 前図4-2 の結論通りになりましたね😊

5.Avoidable Rectangle

 セクションでは、複数解パターンが現れそうな4マスに数字は1つも入っていませんでした。
 このセクションでは、その4マスのいくつかに数字が確定している形の解法を紹介します。
 「Avoidable」とあるように、すでに確定した数字の配置を見て複数解を避けるための解法です。

 ところが……。
 実は、ナンプレを普通に解いている時、解法 Avoidable Rectangle を使う状況はまず訪れません。
 唯一解を根拠とする別の解法を使い、まずは数字を露出させる必要がある。
 最初に下準備をしなきゃいけません。
 なんか面倒くさい😅
 ここでは、Unique Rectangle で下準備をしてから Avoidable Rectangle を使います。

図 5-1

 図5-1 は、解いている途中のナンプレ盤面です。
 問題図に最初からあるヒント数字は黒色、解いている途中で判明した数字は青色で示しています。

 この盤面を使って Avoidable Rectangle を解説しましょう。
 とりあえず、先に結論を言っちゃいます。

  • マスAに数字8は入らない。

 理由は、赤色4マスに Avoidable Rectangle を適用できるから。
 あっ、見ての通り今はまだです😅
 別の場所で Unique Rectangle を使うと赤色4マスに準備が整うので、まずは下準備といきましょう!

図 5-2

 では下準備。
 ところ変わって、図5-2 の黄色4マス。
 なんと、ここに Unique Rectangle が隠れてた!
 図2-1 と同じ理屈で数字が確定しますね。

  • マスBに数字8が確定する。

 黄色4マスを複数解パターンにしないよう、数字8が入ります。

図 5-3

 Unique Rectangle のおかげで、ちょっと解き進みました。

 さぁ、ここで赤色4マスに戻りましょう。
 なんと、3マスが8, 4, 4で埋まってた!
 ここで解法 Avoidable Rectangle が使えるんです。

  • マスAに数字8は入らない。

 理由は、マスAに数字8が入ると「ヒント数字のない unavoidable set」ができあがってしまうからですね。
 それを避けるために、マスAから候補数字8を除去。
 結果、数字2が確定しました。
 めでたし😊

 既に埋まっている8, 4, 4はすべて問題図にはなかった数字。
 これがこの解法の大事なところ。
 もし仮に赤色4マスのどこかにヒント数字があったなら、話はまったく違います。8448の形は何もおかしくはなく、Avoidable Rectangle は使えません。

 ナンプレは解を1つしか持たないというのが原則です。
 当然、製作者はそれを心得ていて、複数解ができないようにナンプレを製作しています。
 だから、そのことをご存じの方々は次のような推測をするかもしれません。

 数字の並びから製作者の意図を推測する。
 あまりにも特殊な解き方で、Avoidable Rectangle ならではの解き方かもしれません。
 「製作者側の意図すら利用してナンプレを解く」ことの是非はおいておくとして、こういう解き方も一応あるんですね〜😄

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