はじめてのパズル選手権 世界文化社で毎夏に行われている『全日本パズル選手権』のできごとを書いちゃいまーす! ……とは言っても、アタシゃぁ裏方なもんで選手権の詳細が書けない。うぅ。 でも、裏方的なコトを書くのもまたイイもんかな。 |
2001年7月上旬ごろ。 郵便受けを見ると、一通の封筒。 淡い黄色か肌色か、他の封筒とは一線を画すキレイな封筒に驚きつつ、封筒を裏返すと……。 「株式会社 世界文化社 パズル編集部」 いったい何だろう? 仕事でその編集部にお世話になっているとは言っても、その編集部から手紙などが来ることはまずない。 せいぜい、月に一度、掲載誌が送られてくるぐらい。 しかも、今までは郵便物が来る場合は事前に電話を一本よこしてくれていたので、世界文化社から郵便物が来てもその中身は想像がついていた。 しかし、その日、その淡い封筒は何の前触れもなく訪れた。 もちろん、その封筒をいくら見つめても中身がわからない。 でも、間違っても事務用とは思えない封筒で手紙が来るということは“特別な何か”があるのだろう、とは想像できる。 その“特別な何か”とは、いったい何なのか。 気になる。 さっそく部屋に持ち帰って、封筒を開ける。 白い手紙から文字が透けて見える。 えぇっと、 ●注意事項 ◇同封の葉書にて、ご出席・ご欠席をお知らせください。 恐れ入りますが、7月16日(月)までにご投函ください。 ◇記念パーティにご出席(以下略) 何だこりゃ? ……と思ったら、手紙がもう一枚。 それは封筒と同じ色。同じ紙質。 紙質からいって、何か仰々しい手紙であることは容易に想像できた。 その淡い色の手紙を開く。 そこに書かれてあったものは……! “Invitation”の英文字。 もしかして、これは……、 しょ、招待状だ! 見た瞬間、思わず顔がほころんだ。 今まで読者としても作家としても参加未経験だったその大会への招待状をいただいたのだ! 今までその選手権の様子はパズル雑誌上の写真、つまり「静」でしか見ることができなかった。 それが、今年はこの目で実際に間近で見られる、つまり「動」で見ることができるのだ! 封筒には出欠をとる返信ハガキも同封されていたけれど、オレの返事はすでに決まっていた。 |
さて、ここでチョット説明を。 読者の方々がこの選手権に参加するためには、どうすればいいのか! まず、世界文化社刊行のパズル雑誌(毎年4〜6月号あたりのヤツ)を買います。 すると、全日本パズル選手権出場用のパズルが1問掲載されているので、それを解いて答えをハガキで応募します。 その応募者の中から抽選で1200人(1雑誌あたり200人)が選ばれます。ここはまさに“運”です! 6月中旬ごろ、その1200人で「予選」が行われます。 予選問題をその1200人へ郵送し、期限までに問題を解いて返送してもらいます。 その返送された中から上位100人が、この『全日本パズル選手権』への参加権を獲得するわけです。 ちなみに、選手権で1位〜3位をとった方は『世界パズル選手権』への参加ができます。 さらに、今回は第10回というキリのいい大会。 第1〜9回までの世界パズル選手権出場権獲得者の中からグランドチャンピオンも決定されます。 『世界パズル選手権』とは、その名の通り、世界で行われるパズル大会。 世界十数カ国からの猛者が集まる大会で、たとえ成績が振るわなくても貴重な思い出になることは間違いないですね。 最終的に選手権に参加するためには最高12倍という高倍率の難関を突破しなければならないから、「選手権に参加する」というのはそれだけでも貴重な名誉なことなんです。 それに、ハガキ抽選という難関も待ちかまえているから、当選したいがためにパズル雑誌を買いまくる読者もいたりするのです。 そういったパズル魂の熱い方々に支えられている、熱い熱い大会なわけです。 運が必要なパズル選手権だけれど、驚くことに5回連続で出場されている方もいるとか。 ここ『EPSILON ★ DELTA』の掲示板によくカキコミしてくれている REPK さんも2回連続の出場です! 実力もさることながら、さらに強運も持ち合わせています。 次に、パズル選手権の内容を。 基本的には「制限時間内に数多くのパズルを解く」だけです。 といっても、パズルというのはただ単に“紙の上でエンピツを走らせる”タイプのものだけではありません。 おもちゃ屋さんで売っているような立体的なパズルを、実際に手を動かして組み立てたりするタイプのものもあるんです。 選手権はラウンドが5つに分かれていて、あるラウンドは“個人戦”で問題用紙とニラメッコ。あるラウンドは“団体戦”で何人かのグループごとに「これはこうじゃない? これはどう?」と和気あいあいながらも立体パズルとニラメッコ。 五感を使ったり和気あいあいとパズルを解くなどというのは、普段はなかなかできないことです。 そんな貴重な体験をさせてくれる、ステキな内容でもあるわけです。 まぁ、個人戦のときは会場がシ〜〜ンとして、まるで“受験”やっているみたいになっちゃうんですけれどね。 わかりづらい説明だったらゴメンナサイ☆ いやぁもぅ、この目で実際に見てないから詳しいことがわからないのです! 来年はぜひ会場にいたい! |
8月4日。 とうとう、当日ですよ! どんな大会なのか楽しみ〜〜! ……と言いたいところだけれど、実は、何日か前に世界文化社のパズル編集部から一枚のFAXが。 お世話になっております。 (中略) 今年の全日本パズル選手権には遠方にも関わらずご出席いただけ るとのこと。ありがとうございます。 当日、パズル作家の方々は大会に出場するのではなく、採点のお手 伝いをしていただくことになっておりますので、何卒ご協力くださ いますよう、お願い申し上げます。 (以下略) 裏方です。 ホッカイドウからはるばる来て、裏方です。 はははー! アタシゃぁ参加できないのかー!? まぁ、これは当然といえば当然なのかな。 なんたって、パズル選手権用の問題は我々作家陣がつくってるもんだから、その作ってる立場の人間が選手として出るワケにゃぁいかない。 作家陣は裏方にまわって、別室で選手のみなさんの答案の採点デス☆ なんと! 赤ペン片手に“丸つけ”ですよ! 丸つけ! なんかもぅ、その日は一日教師気分です! 昼11時ごろ、選手権の会場である京王プラザホテルへ。 新宿駅からホテルへは地図があったからどうにか行けました。 まぁ、ホテルなんてたいして広くないだろうから、現地に着けばもぅオッケーだろうなとは思ってたんだけれど、ホテルに入った途端ビックリしてました。 ひ、広ッ ! ! マジ広いよ! 地元にこんなだだっ広いホテルなんてありゃぁしない! だもんで、この広さに迷いそうになりましたよ! ていうか、迷いました! ここは何階なのかもわからなくなるくらいにっ! ダメですねぇ。方向オンチは。 ていうか、豪華なホテルにはまず行かないビンボウ人です、アタシゃぁ(はははっ) まぁ、でも、どうにか選手権会場を見つけました。 会場とは別のスタッフ控え室に入ると、作家の方々や編集者の方々がたくさんいました。 んもぅ、見覚えのある顔がいっぱい! 以前に電話やFAXを通じてお世話になった編集者の方々を実物で見られたりもして、「あぁこの方が……!」とあらためて感慨にふけっていました。 で、編集者の方々とは名刺交換です。 おぉっ! オレは今はYシャツにネクタイ姿だし、なんだかビジネスマンらしいぞ!? いや、なんせ、オレはモロ私服っていうかパジャマ姿で仕事をしてるもんで(←おいおいマジかよ)、“ビジネスマン”という感覚がまったくないのですよ!でも……、チョット困ったぞ !? 人が! 人が多すぎるっ! いや、そのね、オレは一応名刺を持っているんだけれど、自作オリジナルなのね。 そして、アタシゃぁ堅苦しいモノはキライな人間だから“いかにもビジネスマン的”な名刺はつくらない。 名刺の絵柄は8種類あるんだけれど、編集者さんには渡しにくいふざけた名刺もあるんですよ! こういうのだったらまだいいんだけれど、こんなのとかこんなモンとかなんて絶対マズイよな。 ちなみに、“こんなの”は今井洋輔先生に、“こんなモン”は PUZZY 先生にあげました。 ふ、ふざけた名刺でスマン! んもぅ、顔見知りの作家さんだから渡せる名刺だよな。 さて、選手権の開会式も終わり、第1ラウンドの開始です。 作家陣はスタッフ控え室で第1ラウンドの答案待ち。 テーブルに積み重ねられた赤ペンや電卓の山をくずして、それぞれの席へと配られます。 30分後、答案の山が運び込まれてきました。 長〜いテーブルに作家さんやスタッフのみなさんが並んで座ってシャッシャッシャッと丸つけです。 多少の談笑も交えながら、和気あいあいと。 オレは丸つけしながら、なんだか懐かしさがちょっぴりこみ上げてきちゃったかなぁ。 その昔、予備校の講師を勤めていた記憶を思い出して……。 オレの両隣には PUZZY 先生と野島洋一先生がせっせと丸つけです。 さらに、野島先生の隣には今井先生も丸つけ。 選手のみなさんの苦闘ぶりを目で感じつつ赤ペンを動かしていました。 ひとりが採点、もうひとりが見直し。 それを過ぎると、今度はパソコンを使って点数集計。 夜に行われる表彰式までに、選手100余人もの順位を決めなければならないので、答案が運び込まれてからは控え室は修羅場と化します! しかし。ここで、ひとつ新しい作業が。 実は、パズル界の大御所である西尾徹也先生からプレーオフ用のパズル制作をたまわったんです。 最初は野島先生に名指しで。 おぉ! 大御所からじきじきにお声がっ! ……な〜んて、実は、野島先生は選手権用のパズルをまったくつくってなかったらしく、それで(まるで罰ゲームのように? おしおきのように?)今問題をつくれ、と。 (ホントのコト言うと、実はオレもつくってなかったりして) 野島先生はそれはもぅ「無理ッスよぉ〜」とか笑いながら一生懸命拒否していたけれど、PUZZY 先生の案で PUZZY+野島+今井+E坂の“若手4人による合作”(自分で若手とか言うな)という形で、採点の合間にプレーオフ問題をつくることになったのでした。 『全日本パズル選手権』は『世界パズル選手権』の代表選手3名を決める大会でもあるため、たとえば、3位の人が複数いた場合はプレーオフをして3位の人をただ一人に決めなければならないんです。若手4人が4人とも、ウンウンうなりながらつくってましたねぇ。 PUZZY 先生、野島先生、今井先生、みなさん「生半可な問題はつくらない!」とプライドを持って制作してました。 え? E坂先生は、って !? アタシゃぁ、問題はともかく“清書”だけなら自信が!(そんなんでいいのか) 問題の清書はオレが担当。 定規でマス目をつくって、なるべく活字に見えるように数字を書き入れて……。 はいっ! プレーオフ用パズル問題の完成です! オレら4人の先輩格にあたる津内口真之先生は「これ売れるぞ!」とかって冗談混じりで言ってくれたりして、「4人の生サインもつけて売ろうか」とか冗談が飛び交って楽しい雰囲気の中、パズル制作後の充実感はありましたね。 ただ……。 実のところ、選手権過去9回のうちでプレーオフが行われたことは一度もないらしいんです。 だから、プレーオフ問題を一生懸命つくって一生懸命清書したところで、しょせん日の目を見ることはないだろう、と。 ま、でも、お蔵入りになったとしても“4人合作”自体がめずらしいことだし、楽しくつくれたからそれでオレは満足はしてたんですけれどね。 少なくとも、スタッフの誰もが「この問題は使われないだろう」とは思っていたとは思いますね。 あの時点では。 |
夕方5時6時と過ぎ、5ラウンドもの長丁場だったパズル選手権も無事終了しました。 選手のみなさん、おつかれサマでした! このあとは、その労をねぎらう“受賞パーティ”です。 スーツやジャケット、ドレスに身を包んだ老若男女が楽しく会話&会食を楽しむひととき。 実はこの選手権、第10回という節目を迎えたということもあって、ゲストを招いていました。 そのゲストは……、ピーター・フランクルさん。 大道芸に通じているだけじゃなく、数学でも群を抜く才能を持っていて、以前刊行されていた『パズラー』というパズル雑誌でコラムを執筆されていた方です。 みなさんはご存じですよね !? パーティのメインはピーター・フランクルさんのステージです! ジャグリングなどの大道芸を間近で(しかも一番前で!)堪能してきました。 ときどき(たぶん、わざと)ミスをして洋人らしい明るくあきれた表情をして笑いを取ったり、キメるところはばっちりキメて拍手喝采。 観客を魅了していました。 そのステージのあと、掲示板でお世話になってる REPK さんとお会いしました。 掲示板でのカキコミから“マジメそうな”雰囲気を受けてたんだけれど、実物の REPK さんは掲示板そのまんまな雰囲気で。 でも、気むずかしいところなんかまったくなくって話しやすかったです。 そんなに長くは話さなかったけれど、でも、翌日はポップンで充分に遊ぶつもりだし言葉少なでも満足でした。 さて。 パーティも終盤を迎え、結果発表、表彰式です! 20、30、40、50、100位の“とび賞”、4〜16位の“上位入賞”、危ない危ない“ブービー賞”の表彰が終わり、残るは『世界パズル選手権』出場が決まる1〜3位の発表、そしてグランドチャンピオンの発表を残すのみ。 グランドチャンピオンはものすごい接戦だったそうです! なんと、2位とは5点差! さらに2位と3位は10点差! その大接戦の中から抜け出たグランドチャンピオン。世界パズル選手権出場決定です! いやぁ、世界大会を2回も経験できるんです。すばらしい。 グランドチャンピオンの前に1〜3位の発表があったんだけれど、これが実は……とんでもないことになったのでした。 3位の方の発表が終わり、第2位の発表のときです。 「続いて、第2位の発表です!」 ダカダカダカダカダカダカダカダカ……ダンッ!(ドラムのアレね) 「第2位は……!」 |
「第2位は……!」 選手、スタッフ全員がかたずを飲む。 「第2位は……いません!」 !! えっ !? いない !? 会場のどよめき。詳細がまだわからぬまま、ここで司会から西尾先生へバトンタッチ。詳しい説明です。 実は……、点数集計をした結果、なんと、同点で第1位が2人出たらしいのです! まぁ、別にこの2人は順位をつけなくても世界パズル選手権には2人とも行けるわけだし、第一、同点なのだから2人とも実質的には1位なのです。 ただ、1位と2位では賞品が違う! そこで、なんと、 優勝をかけて、プレーオフを行うことになったんです! その方法は……、 プレーオフ問題を早く解いた方が勝ち! というもの。 で書いたことをチョット思い出してくださいね。 採点の合間、PUZZY+野島+今井+E坂の4人でつくったプレーオフ問題。 それが、日の目を見ることになっちゃったのですよ! なんとまぁ! 過去9回、日の目を見ることのなかったプレーオフ問題が、今回は“お蔵入り”にならなかったのです! 同率1位が出たことにも驚きだったろうけれど、つくった側としては「まさか実際に問題が使われる」とは思ってもみなくてさらに驚きでした! うっわぁ〜! つくっといてよかったよ! 清書しといてよかったよ! 上位2人が会場をあとにして、優勝をかけてのプレーオフ。 思わず、会場を出て2人の解く姿をじっと見てしまいました。 テーブルの上には同じ問題用紙が2枚。 2人はオレの清書をじっと見つめ、その上にエンピツを走らせていました。 決着までの3分間。 短かったような、長かったような3分間。 周りの静かな雰囲気とは正反対に、オレの心は高ぶってばかりいました。 いやぁ、はじめて参加した大会でまさかこんな展開になるとは思ってもみなかった。 |
まるでドラマチックな展開も過ぎ、参加者全員の写真を撮って選手権は終わりを告げました。 会場に残った少数の選手、スタッフの談笑。会食。 スーツから私服へと着替え、選手権の余韻を楽しんでいました。 夜も9時10時をまわって、さぁ、今度はスタッフ同士の打ち上げです! オレらが店に行ったころには、先着隊がすでに酒などを楽しんでいました。 席がだいぶ埋まったところで、カンパイの音頭です。 「今日はおつかれサマでした」ってなことを聞いてグラスを掲げ、選手権の成功を祝いました。 ここで。 まぁ、普通だったらカンパイの音頭なんて一回きりだとは思いますよね。 そのあとは、ただ楽しくしゃべるだけなのだから。 でも、そのときはまだ全員が集まっているわけじゃなかったようだったんです。 そこで、全員が集まったころを見計らって、もう一度、カンパイの音頭です。 別に音頭なんて2回やろうが3回やろうが全然かまわないんだけれど、ところが……。 パズル編集部長の土肥さんが、 「音頭を、プレーオフ問題の清書をしていただいたE坂もるむさんに……」 あわわわわわわわわわわわわわっ! 待ってくれ待ってくれ待ってくれっ! オレ、音頭なんてやったコトないんだってばっ! 音頭っつったって、何言えばイイのか全然わかんないんだってよぅ〜〜〜! いやぁもぅ、しゃべりはダメなんすよぅオレはー! 急にこういうの振られても、何していいのかわかんないんですよぅ。 もぅ、当然のごとくしどろもどろ。 西尾先生に助け船をだしていただいて、なんとかカンパイができました。 ふぅ〜。ただでさえトウキョウは暑いのに、余計に汗かいちゃったよ、もぅ。 あとは、別の場所でカラオケ。 そして、一曲歌ったあと、みなさんとお別れをしました。 年に一度の『全日本パズル選手権』。 実に楽しい一日をありがとうございました。 選手のみなさん、スタッフのみなさん、おつかれサマでした。 また、来年も是非! 行きたい! あ。カラオケでトシに似合わず“LOVEマシーン”なんぞ歌ったコトはナイショにしといてください。 |
EPSILON ★ DELTA 管理人:E坂もるむ |