【解法】Broken Wing

 Broken Wing は、強いリンクだけからなるループに着目した解法です。
 「奇数個」の矛盾を逆手に取るという、一風変わった特徴があります。
 このページを読むためには、強いリンク/弱いリンクを理解する必要があります。
 (難易度:★★★★)

1.悲劇のループ

 Broken Wing を理解する前に、大事なことが1つあります。
 まずは、それについて説明しましょう。

 以降、図の中には赤い矢印青い矢印がありますが、それぞれ 強いリンク弱いリンク を表します。

図 1-1

 図1-1 を見てみましょう。
 これは、5以外の候補数字を無視した部分図です。
 この図以降、薄青色の×印を付けたマスに候補数字5は存在しないものと考えてください。

 さて、5マスA〜Eに注目しましょう。
 この5マス同士が強いリンクで順に結ばれ、強いリンクだけでぐるっと1周していますね。
 一瞥しただけでは、何の変哲もない普通のループのように見えます。

 ところが!
 このループはとんでもない特徴を持っているんです。

  • 奇数個の強いリンクでループになっている。

 「とんでもない特徴」だなんて、んな大げさな😅
 いやいやいや、実は、大げさではなかったりします。

 「特徴」を通り越して、致命的な欠陥なんです。

図 1-2

 「致命的な欠陥」だなんて、さらに輪をかけて大げさな😅
 一体、どこら辺が致命的なんでしょう?
 奇数個の強いリンクで1周してる。ただそれだけなんですが……。

 実は……これが致命的な欠陥なんです。

  • 「奇数個」のせいで、既に破綻が起きている。

 奇数個。
 これがそもそもの元凶なんです。

 実は、このループ、マスAに数字5が入っても入らなくても破綻を引き起こしてしまいます。

図 1-3

 例えば、「マスAに数字5が入る」と仮定してみましょう。
 すると、こういう流れが起きます。

  1. (仮定)マスAに5が入る。
  2. すると、弱いリンク によりマスBに5は入らない。
  3. すると、強いリンク によりマスCに5が入る。
  4. すると、弱いリンク によりマスDに5は入らない。
  5. すると、強いリンク によりマスEに5が入る。

 ありゃ?
 ループを1周したら赤枠ブロックに数字5が2個も入ってもぅた。
 これは破綻です😵(図1-3)

 逆に、「マスAに数字5は入らない」と仮定すると、今度は赤枠ブロックに数字5を1つも入れられなくなってしまう。これも破綻。
 マスAに数字5が入ろうが入るまいが、破綻にたどり着くんですね。

 あぁ……こりゃ詰みだ🥺

 というわけで、奇数個の強いリンクだけでループができてしまうと、悲劇的な結末を迎えてしまいます。
 だから、ナンプレの盤面においてこういうループは絶対に存在してはいけないのです。
 ちなみに、強いリンクが偶数個だった場合は何の問題も起こりません。
 ループを1周しても矛盾はまったく起きません。

 偶数奇数の違いだけでこれだけ性質が変わる。
 これもまたリンクの特徴と言えるでしょう。
 なんとも不思議な特徴です。

2.どういう解法?

 奇数個の強いリンクだけでループを作ると破綻を引き起こす、ということが判明しました。
 Broken Wing はそれを逆用した解法ですが、一体どういうものなんでしょう?

図 2-1

 図2-1 を見てみましょう(部分図です)。
 前セクションの盤面にマスXを付け足した物です。
 薄青色×印のマスに候補数字5はないものとして、5マスA〜Eの候補数字5を順にリンクで結んでループができていますね。

 このループ、4個は強いリンクです。
 だけど、1個だけは弱いリンクですね。
 なぜ弱いリンクなのかと言うと、3マスC, D, Xに候補数字5があるからです。

  • 奇数個のリンクでループができている。
  • ループに関わる形でループ外にマス(マスXのこと)がある。

 ここで、前セクションの話を思い出しましょう。
 図2-1 の状況では、「2マスC, Dが強いリンクで結ばれる」なんてことが起きてはいけないのです。
 是が非でもそれを阻止しなければならぬ!
 悲劇が起きてはならぬ!

 となると、ある1マスがクローズアップされてくる。
 このループの運命を握る、重要な存在。
 それはマスXなんです。

図 2-2

 では、結論です。
 図2-1 からはどうなるのか。

  • マスXに数字5が確定する。

 図2-2 の通りになります。
 重要な存在と言ったマスXにあっさりと数字が確定してもぅた😊

 なぜ確定するんでしょう?
 それは、マスXに数字5を入れなければ破綻を引き起こすからです。

 マスXから候補数字5を除去してしまうと、2マスC, Dは強いリンクで結ばれてしまう。
 悲劇のループができあがってしまうのです。
 だから、マスXに5を入れて破綻を回避するしかありません。

 マスXに数字5を入れないと、この世の終わりがやってくる。(大げさ)
 しかし、数字5が入ってくれたおかげで、この世に平和は保たれた。(大げさ)
 この「マスXの候補数字5」は大事な務めを果たしたわけです。

 マスXにあるこの候補数字5、名前が付いています。guardian と呼びます。
 ガーディアン。
 悲劇が生じないようループを見守る守り神、そんな存在なのかもしれません。(大げさ)

3.実際に使ってみよう!

 次は、実際の盤面で Broken Wing を使ってみましょう。

図 3-1

 図3-1 では、とあるマスに数字が確定します。
 それを解法 Broken Wing で突き止めてみます。

 この解法を使うためには、奇数個のリンクからなるループを見つけなければいけません。
 そして、破綻を阻止する guardian も必要です。
 それらをを探しましょう!

図 3-2

 候補数字6に注目すると見つかりました。
 該当のループと guardian は 図3-2 の通りです。

  • 奇数個のリンクでループができている。
  • guardian はマスXの候補数字6。

 まさに Broken Wing の使える形をしていますね!
 早速使いましょう!

図 3-3

 前セクションと同じ理屈を適用しましょう。
 結論はこうなります。

  • マスXに数字6が確定する。

 guardian のあるマスに数字が確定です!
 guardian が見事に働いてくれました。

 理由は、もちろん、破綻を引き起こさないようにするためです。
 もしマスXに6が入らないとすると、2マスA, Eが強いリンクで結ばれてしまう。

 そんな悲劇を招いてはならない。
 だから、マスXに数字6が入るんですね。

4.guardian が複数あるパターン

 今までのセクションでは、guardian が1個だけ存在しました。
 このセクションでは、複数の guardian が存在するパターンを解説します。
 パターンのバリエーションはそれなりにあります。4パターンを紹介していきます。

図 4-1

 図4-1 を見てみましょう。
 セクションの盤面にさらにマスYが増えています。
 リンクが奇数個なのは変わりませんが、今度は guardian が2つになりました。

 この場合の結論はこうなります。

  • マスX, Y両方と列やブロックを共有しているマスがある。そのマスから guardian と同じ候補数字を除去できる。

 図4-1 だと、赤色×印の4マスが該当します。
 このマスに数字5は入りません。

 なぜこの結論になるんでしょう?
 それは、マスXにもYにも数字5が入らないとすると、破綻を引き起こしてしまうからです。
 悲劇のループができあがってしまうんですね。
 だから、X, Yのうち最低1つには必ず数字5を入れなきゃいけない。
 そうなると、×印のマスに数字5は入れられないんです。

 guardian を持つマスの位置関係によって、結論はさまざまです。
 しかし、本質はどれも同じです。
 要は、guardian を持つマスのうち最低1つに数字が確定するということです。
 そこから展開される結論になっています。

図 4-2

 次は、2マスX, Yが同じ列に属している形。
 結論はこうなります。

  • 2マスX, Yの属する列において、X, Y以外のマスから guardian と同じ候補数字を除去できる。

 図4-2 だと、赤色×印のマスが該当します。
 このマスに数字5は入りません。
 これも理由は同じ。
 マスX, Yのどちらかに必ず数字5が入るからです。

 図4-2 のように、guardian の位置によってはループ上のマスに影響が出たりするんですね。

図 4-3

 今度は、マスXが弱いリンクを量産している形。
 結論はこうなります。

  • マスDから guardian と同じ候補数字を除去できる。

 理由は同じです。
 マスX, Yの少なくとも一方に必ず数字5が入るからなんですね。

図 4-4

 最後は、guardian が3つある形。
 結論はこうなります。

  • 3マスX, Y, Zすべてと列やブロックを共有しているマスがある。そのマスから guardian と同じ候補数字を除去できる。

 理由は同じです。
 マスX, Y, Zのうち最低1つに必ず数字5が入るからなんですね。

5.guardian の悲劇

 ここからは余談です。
 ずっと「悲劇のループ」とか悲劇悲劇と連呼してきましたが、今度は guardian 自身の悲劇を話してみようかと思います。
 あ、いや、涙するような話じゃないのでハンカチは不要です😊

 さて、早速、悲劇をぶっちゃけましょうか。
 実は……

guardian って、あんまり役に立ちません。

 マジか😅
 重要な存在だの守り神だの言ったのに😅

 Broken Wing は「ループ+guardian」という合わせ技で使う解法です。
 ところが、ループの一部だけを見ると他の解法が使えたりするんです。

図 5-1

 例えば、セクションでは、guardian が守り神となってループを危機から救ってくれました。
 あの図を別の視点で考察してみましょう。

 図2-1 から強いリンクを2本取り除いてみます(図5-1)。
 -- と3個のリンクが「コ」の字につながっていますね。
 この形をよく見ると…… なんと、解法 Skyscraper が使えるんです!

 あらま。
 じゃぁ、その解法をちょいと使ってみましょうか。

図 5-2

 Skyscraper により、赤色×印の6マスに数字5を入れられません。
 あら、マスAに5は入らなくなったね。
 となると、マスBとEに5が入ることになるなぁ。
 さらに、マスCとDに5は入らなくなるよ。
 最後は、マスXに5が確定しちゃった。

……あれ?
guardian さん、何にも仕事してなくね?

 guardian さんはループの守り役を担ってるはずでした。
 ところが、ループさんは普通に自己解決しちゃったんです。
 guardian さん、出る幕なし😅

 「自分でやっちゃいました〜! すいませ〜ん!」
 「あ、ついでに guardian マスさんにも数字を入れときました!」
 「でも、これだと guardian さんに申し訳ないんで〜、guardian さんに守ってもらったという形で処理しときますんで〜!」
 「ありがとうございました〜〜!」
 「……」

 切ないぜ🥺

 こんなふうに、ループ上のリンクの配置に応じて他の解法に置き換えが利いてしまうんですね。
 例えば、図4-1 だと2マスB, Cと3マスA, E, Dに分けて Multi-Colors が使えます。
 んで、「マスEに数字5が確定する」という結論が出せる。
 他には、2-String KiteSimple Colors なども使えることがあります。
 guardian の存在を無視しても、ループだけで結論が出ちゃったりするんです。

 また、運良くループが見つかったとして、guardian を探すと……たくさん見つかったりする😅
 セクションみたいに1人だけ居てくれればいいんだけど、あっちこっちに guardian さんが居たりする。
 いくら守り神だとは言っても、八百万では結論は出ません。
 Broken Wing はほぼ一神教の解法なんですね。
 しかし、「1個だけ guardian が見つかる」なんて都合の良いこと、まず起こりません。

 なんかこぅ、いろいろ考えると guardian はちょっと悲しい存在にも見えてきてしまう。
 guardian の恩恵に与れるのは……果たしていつの日か。
 いつか活躍する日が訪れんことを願うばかりです。

参考・参照

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