【解法】Empty Rectangle

 Empty Rectangle は、一列とブロックに関する解法です。
 ブロック内における特定の候補数字が1行&1列にしか入らない、という特徴を持ちます。
 (難易度:★★★)

1.どういう解法?

 Empty Rectangle の舞台は、1列と1ブロック。
 列とブロックの連携もさることながら、ブロック内部に大きな特徴のある解法です。
 その特徴が1マスに綺麗に刺さります。

図 1-1

 図1-1、青色ヨコ列とピンク色ブロックを見てみましょう。
 それぞれにおいて数字1の入り得るマスを探したら、●○▲の場所しかなかったとします。
 これらのマスには次の特徴があります。

  • 青色ヨコ列において、数字1は●と○にしか入らない。
  • ピンク色ブロックにおいて、数字1は▲の5カ所にしか入らない。
  • ▲は十字型に並んでいる。
  • タテに並んだ▲▲▲は●と同じタテ列に属している。

 この十字型というのがポイント!
 これが Empty Rectangle の最大の特徴です。

図 1-2

 さて、前図1-1 からはどういう結論が得られるんでしょう?
 こうなります。

  • ○ ▲12 の3マスと列を共有するマスが1つある。そのマスに数字1は入らない。

 図1-2 だと×印のマスが該当します。
 ×印マスは○とタテ列を共有し、▲12 とヨコ列を共有しています。
 このマスに数字1は入らないというわけです。

 なぜこういう結論になるんでしょう?
 それは、○ ▲12 のうち少なくとも1つに必ず数字1が入るからなんです。
 それを解説しましょう。

図 1-3

 さて、青色ヨコ列では●と○のどちらかにしか数字1を入れられません。
 そこで、もし●に数字1が入った場合にどういうことが起きるんでしょう?

 5つの▲のうち3つの▲に数字1を入れられなくなります。
 残ったのは ▲12 の2つだけ。
 そのどちらかに数字1が入ることになりますね。
 ただ、▲12 の位置関係を見てみると……

  • 1 も ▲2 も同じヨコ列に属している。

 ここがミソなんです。

図 1-4

 ●と○のどちらかに必ず数字1が入ります。
 しかし、どちらに入ろうとも 図4-1 ×印マスに数字1が入らないという結末になっていくんです。

 検証してみましょう。
 ○に1が入った場合は簡単ですね。
 青色矢印を見ればOK!
 ●に1が入った場合は 図1-3 の説明通りに話が進みます。
 ▲12 のどちらかに1が入るため、ピンク色矢印により×印マスに数字1を入れられない。

 というわけで、×印マスに数字1は入りません。
 図1-2 の結論通りになりましたね😊
 これが Empty Rectangle という解法です。

▲の配置はL字型やT字型もある。
図 1-5

 今までの説明は▲が十字型に並んだ場合でした。
 ほかにはL字型やT字型に並んだ場合もあります。
 その場合も 図1-3 の理屈が成り立ち、×印のマスに1は入りません(図1-5)。

 ▲の配置は全部で9種類あります。
 L字型とT字型は4種類ずつ(図1-5)、十字型は1種類です(図1-1)。
 これらには共通点があります。

  • ▲がタテヨコ1列ずつのみ配置されている。

 この配置でなければ Empty Rectangle を使うことができません。
 注意が必要です。

▲は4個以下でもOK!
図 1-6

 上記では▲が5個ある場合で説明しましたが、5個より少なくてもかまいません。
 前図1-5 で説明した▲がタテヨコ1列ずつのみ配置されているということが重要であり、それを満たしていれば▲の個数は関係ありません。

 図1-6 の場合でも、×印のマスに1は入りません。

 上記は、ヨコ列&ブロックによる Empty Rectangle でした。
 もちろん、タテ列&ブロックの場合でも理屈は同じです。
 それについては、次セクションで実例を挙げて解説しましょう。

2.実際に使ってみよう!

 次は、実際の盤面で Empty Rectangle を使ってみましょう。

図 2-1

 図2-1 では、とあるマスに数字が判明します。
 それを Empty Rectangle で突き止めましょう。

 ここでは数字5に注目して、5の入り得るマスを探してみます。

図 2-2

 青色ヨコ列とピンク色ブロック、これが今回の Empty Rectangle の舞台です。

 この2つを調べると、数字5はどちらも数カ所にしか入れられません。
 青色の列では●と○の2つ。
 ピンク色のブロックでは▲の4カ所。
 図2-2 の通りです。

 ●○▲の位置関係を見ると……まさに配置がピッタリ!
 ▲はT字型
 そして、▲▲●がヨコ並び!

 さぁ、舞台は整いました。
 あとは Empty Rectangle を使うだけ!

図 2-3

 では早速使ってみましょう。
 こうなります。

  • 図2-3、×印のマスに数字5は入らない。

 理由を簡単に説明しましょう。
 ●と○のどちらかに必ず数字5が入ります。
 ○に入った場合は、青色矢印でOK。
 ●に入った場合は、必然的に2つの▲のどちらか(図2-3 左下の「5?」です)に5が入ることになりますね。
 この場合はピンク色矢印でOK。

 というわけで、上記の結論が成り立ちます。
 ×印のマスに数字5を入れられなくなりました。

図 2-4

 うまく Empty Rectangle が使えましたね!
 もぅちょっと解き進めてみましょう。

 図2-3 の×印マスを含む列やブロック全域に目を通すと、×印マスには5と7しか入れられないことがわかります。
 しかし、前図2-3 によって数字5も入らなくなりました。

 というわけで、そのマスに数字7が確定しちゃいました😄

3.Dual Empty Rectangle

 さて、ここからは Empty Rectangle の派生形を2つ紹介しましょう。
 このセクションで紹介するのは、列が1つ増えた形のものです。

図 3-1

 図3-1 を見てみましょう。
 青色ヨコ列、赤色タテ列、ピンク色ブロックがありますね。
 それぞれにおいて数字1の入り得るマスを探したら、こんな状況だったとします。

  • 青色ヨコ列において、数字1は★と○にしか入らない。
  • 赤色タテ列において、数字1は★と◇にしか入らない。
  • ピンク色ブロックにおいて、数字1は▲にしか入らない。
  • ★は青色&赤色2列の交差箇所にある。
  • ▲は十字型に並んでいる。
  • タテに並んだ▲3個は○と同じタテ列に属している。
  • ヨコに並んだ▲3個は◇と同じヨコ列に属している。

 上記では「十字型」と書きましたが、もちろんL字型やT字型でもOKです。

 従来の Empty Rectangle に赤色タテ列が増えました。
 これが Dual Empty Rectangle と呼ばれる形です。

図 3-2

 さて、前図3-1 からはどういう結論が得られるんでしょう?
 こういう結論になるんです。

  • ★マスに数字1が確定する。
    さらに、2マス○◇に数字1が入らないこともわかる。

 2列に直接影響が出るんですね。
 数字まで確定しよった!

 なぜ、こういう結論になるんでしょう?
 それは、○と◇の少なくとも一方に1を入れられなくなるからなんです。
 それを解説しましょう。

図 3-3

 ピンク色ブロックの▲マスをA〜Eとしてみました。

 キーとなるのは、このピンク色ブロックです。
 A〜Eの5マスにしか数字1は入りませんが、どこに1が入るかによって2マス○◇のどちらかに影響が出るんです。

 3マスA, C, Eのどれかに1が入った場合は、○に1は入りません。
 3マスB, C, Dのどれかに1が入った場合は、◇に1は入りません。
 というわけで、次のことが成り立つんです。

  • ○と◇の少なくとも一方には数字1は入らない。
図 3-4

 ○に数字1が入らなかった場合、青色ヨコ列を見れば★に1が確定します。
 そのあと、続けて赤色タテ列を見ると◇に1は入らないこともわかります。

 ◇に数字1が入らなかった場合、赤色タテ列を見れば★に1が確定します。
 さらに、続けて青色ヨコ列を見ると○に1は入らないこともわかります。

 どちらにしても、★に数字1が確定するんですね。
 そして、○にも◇にも数字1は入らないことになるんです。
 図3-2 の結論通りになりました😊

4.Double Empty Rectangle

 Empty Rectangle の派生形をもうひとつ紹介します。
 今度は、ブロックが2つあるパターンです。
 1列&ブロック2個がうまく連動して話が進んでいきます。

図 4-1

 図4-1、青色ヨコ列、ピンク色&オレンジ色ブロックを見てみましょう。
 それぞれにおいて数字1の入り得るマスを探したら、こんな状況だったとします。

  • 青色ヨコ列において、数字1は△と◇にしか入らない。
  • ピンク色ブロックにおいて、数字1は▲にしか入らない。
  • オレンジ色ブロックにおいて、数字1は◆にしか入らない。
  • ▲と◆は十字型・T字型・L字型に並んでいる。
  • タテに並んだ▲3個は△と同じタテ列に属している。
  • タテに並んだ◆3個は◇と同じタテ列に属している。
  • ▲と◆がヨコ1列に6個並んでいる箇所がある。

 特に、最後の「ヨコ1列に6個並ぶ」というのが最大の特徴です。

 従来の Empty Rectangle にブロックがもう1個が増えました。
 これが Double Empty Rectangle と呼ばれる形です。

図 4-2

 さて、前図4-1 からはどういう結論が得られるんでしょう?
 こういう結論になるんです。

  • ▲◆が6個並んでいるヨコ列において、▲1212 以外の5マスに数字1は入らない。

 図4-2 だと、×印の5マスが該当します。
 このマスに数字1は入らないというわけです。

 なぜ、こういう結論になるんでしょう?
 それは、▲1212 のどれかに必ず数字1が入るからなんです。
 それを解説しましょう。

図 4-3

 青色ヨコ列では△と◇のどちらかに必ず数字1が入りますね。
 それぞれ話を進めてみましょう。

 まず、△に数字1が入った場合はどうなるか。
 ピンク色ブロックではタテ並びの▲に1は入らず、▲12 のどちらかに必ず1が入ることになります(図4-3)。
 次に、◇に数字1が入った場合はどうなるか。
 今度はオレンジ色ブロックではタテ並びの◆に1は入らず、◆12 のどちらかに必ず1が入ることになりますね。
 というわけで、次のどちらかが必ず成り立ちます。

  • 12 の片方に数字1が入る。
  • 12 の片方に数字1が入る。

 ……ですが、実は、これはもっと簡単に書けたりする。
 こうなるんです。

  • 1212 のどれかに数字1が入る。
図 4-4

 そうなると、数字1を入れられないマスが生じます。
 図4-4、×印の5マスです。

 ▲1212 の4マスはすべてヨコ1列に属しています。
 そして、その4マスのどれかに必ず数字1が入る。
 となると、残りの5マスに数字1の入る可能性はなくなるんですね。

 図4-2 の結論通りになりました😊

5.Empty って何? Rectangle はどこ?

 ここからは余談です。

 このページで紹介した解法、名前は Empty Rectangle です。
 empty は「空っぽ」ですね。rectangle は「矩形」です。
 つまり、空っぽの矩形です。
 でも、今までの解説に「空っぽの矩形」らしき物って……あったっけ?
 このセクションでは、本来の「Empty Rectangle」の概要を説明しようと思います。

 Empty Rectangle については、『The New Sudoku Players' Forum』の The Empty Rectangle (ER) というトピックで概要が述べられています。
 それを基に解説していきます。

図 5-1

 元々、「Empty Rectangle」は次の状況のことを言うんです。

  • 数字nの入らない4マスがブロック内部にあり、それらが矩形状に並んでいる。この時、その4マスを empty rectangle と呼ぶ。

 図1-1 の盤面をもう一度(図5-1)。
 図1-1 では「ピンク色ブロックにおいて数字1は▲の5カ所にしか入らない」と状況説明しました。
 言い換えると、これは「▲以外の4マスに数字1は入らない」となりますね。

 そして、その4マスは矩形状に並んでいます。
 この4マスが empty rectangle なんです。

図 5-2

 empty rectangle の例をいくつか挙げましょう。

 数字1の入り得るマスが 図5-2 の通りだったとします。
 小さい「1」で示しています。
 この時、各ブロックの empty rectangle は図の通りです。
 わかりやすくカラフルに色付けしてみました😊

 図を見てみると、「数字nが入らない」という意味では本当に空っぽな矩形状ばっかりですよね。
 まさに「empty rectangle」です。

図 5-3

 ここからは、empty rectangle を中心に考察しましょう。
 図5-3 の黄色ブロックにおいて、▽の4カ所には数字1が入らないとします。

 この時、▽以外の5マスに2本の直線を通すことができるんですね。
 図5-3、タテヨコの2本です。
 ここではその直線を ERL(empty rectangle line)と名付けておきましょう。

 そして、この2本の ERL はブロック内部で必ず交差します。
 交差箇所のマスを ERI(empty rectangle intersection)と名付けましょう。

 こう定義することで、どの empty rectangle に対しても必ず ERI が存在することになりますね。

図 5-4

 図5-2 の盤面をもう一度(図5-4)。
 各ブロックの empty rectangle に対して、ERI を示します。
 *印のマスが ERI です。

 empty rectangle に対して ERI は斜めに位置しているような感じ?
 そんなふうに見えますね。

 さぁ、ここまで empty rectangle, ERL, ERI の3つを説明しました。
 では、それらを使って解法 Empty Rectangle を軽くもう一度解説しましょう。

図 5-5

 まずはセクションで使った盤面(図5-5)。
 ただし、図と表現を少し変えます。

  • 青色ヨコ列において、数字1は●と○にしか入らない。
  • ピンク色ブロックにおいて、数字1は▽の4カ所には入らない。つまり、▽の4マスは empty rectangle である。
  • *は ERI であり、●はタテ線 ERL 上に存在する。つまり、●と*は同じタテ列に属している。

 もちろん、図5-5 からの結論は 図1-2 で述べた結論と同じです。
 が、これも表現を変えます。

  • 2マス○, *と列を共有するマスが1つある。そのマスに数字1は入らない。

 ×印のマスに数字1は入らない、というわけですね。
 理由はセクションとまったく同じです。

図 5-6

 実例も挙げましょう。
 次はセクションで使った盤面(図5-6)。

  • 青色タテ列において、数字5は●と○にしか入らない。
  • 左下ブロックにおいて、数字5の入り得るマスを小さい「5」で示した。数字5の empty rectangle はピンク色4マス。
  • *は ERI であり、●はヨコ線 ERL 上に存在する。つまり、●と*は同じヨコ列に属している。

 この状況で Empty Rectangle を適用すると、こうなります。

  • ×印マスに数字5は入らない。

 理由はセクションとまったく同じです。

参考・参照

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