1.少し独特な世界へようこそ!
今から皆さんにするお話は、少し独特な世界のお話です。
ナンプレ盤面の3分の1という、ちょっと小さな世界。
そして、3つ連ねたマスたちと数字たちが織りなす世界です。
![](01_1.png)
図1-1 を見てみましょう。
まぁごく普通の完成図です。
何百何千と解いてきた皆さんが山ほど目にした物です。
あっ、横並びの3マスをひとまとめにしちゃってます。ご注意ください。
盤面に違和感があるかもしれないけれど、まぁわかるでしょう。
ここで注目すべきところは、盤面の3分の1です。
つまり、ブロック3個分の矩形領域。
ブロックを1個ずつ順に見ていくと、数字の場所が移り変わります。
その変遷をたどってみましょう。
![](01_2.png)
まずは、上段の3分の1。
左端のブロック、数字1, 2のペア(赤色)に注目しましょう。
そこから右へ右へとブロックに目を移していくと、ペアはそろって1つ下のヨコ列へと移動していってますね。
じゃぁ、数字3(青色)はどうか。
これは1つ上のヨコ列へと移動しています。
次は、下段の3分の1。
この領域では、3つの数字7, 8, 9が仲良く一緒に1つずつ上へ上へと移動していますね。
方向の違いはあれど、どれも一段ずつ移動している。
実は、この「段階移動」が大きなカギを握っているんです。
ナンプレというパズルは9×9の中に大きな世界があります。
だけど、実は、3×9の中にも小さな世界を持っている。
そして、その世界では「段階移動」に大きな秘密があるという……。
何言ってんだかサッパリわかんないですよね😅
後々この段階移動のことを「トラベル」というワードで表しますが、この小世界では「トラベル」が大きなキーワード。
まぁまぁまぁ、今はわからなくてもOKです。このページを読んでいけばわかります。
とりあえずこの独特な世界に飛び込んでみましょうか。
![](01_3.png)
さて、これからこの世界に触れていくわけですが、まずは前準備が必要です。
なんせ見慣れない世界なので、新しいワードが押し寄せてくる😅
用語をいろいろ紹介しなきゃいけません。
まず、世界そのものである3×9の領域。
これを chute(シュート)と呼びます。
chute は2種類あります。
9×3サイズでタテ長の chute、これを tower と呼びます。
3×9サイズでヨコ長の chute、これを floor と呼びます。
図1-3 の青色領域は tower ですね。
図1-2 は floor 内部での段階移動を説明しています。
![](01_4.png)
次は、列とブロックの交差箇所です。
図1-4 では青色列と黄色ブロックが交差していますね。交差箇所は緑色で表しています。
この領域のことを intersection と呼びます。
もちろん、列はタテとヨコの2種類ある。
ということは、intersection も2種類あるわけですね。
タテ列とブロックの交差箇所、これを boxcol と呼びます。
ヨコ列とブロックの交差箇所、これを boxrow と呼びます。
図1-4 の緑色領域は boxrow ですね。
ちなみに、この2つは造語です。
box&column、box&row から来ています。
![](01_5.png)
このページで繰り広げる世界は9つのエリアに分かれています。
図1-5 の形です。
これは、ナンプレ用語を使うと次のように言い表せます。
- floor は9つの boxrow に分かれている。
- tower は9つの boxcol に分かれている。
図1-2 では「段階移動」を説明しました。
これは、こう言い方もできます。
- floor 内部では、数字は3つの boxrow を斜めに渡り歩いている。
- tower 内部では、数字は3つの boxcol を斜めに渡り歩いている。
いっぱい用語が出すぎてホントすいません😅
でも、この新しい世界では必要な物ばっかりなので、なんとか覚えちゃってください😊
これらを覚えれば、前準備は完了です。
2.トラベルって何ぞや?
では、いよいよこの独特な世界へ旅立ちます!
用語はもう少し出てきますが、追い追い説明していきます。
![](02_1.png)
図2-1、黄色の chute を見てみましょう。
横長の chute(つまり floor)ですね。
あっ、マス単位ではなく boxrow 単位で盤面を表しているので、図2-1 の1区画は boxrow だと考えてください😊
今、左端のブロックに9つの数字が入っています。X, Y, Zとしましょう。
XXXなどと同じ文字で書きましたが、これは異なる3個の数字を表します。
ここでは、これを トリプレット と呼ぶことにしましょう。
このセクションでは、トリプレットにおいて数字の並び順は考慮しません。
![](02_2.png)
左端ブロックに9個の数字が入った状態で、他のブロックにも数字を入れて floor を完成させてみます。
真ん中のブロックでは、赤枠内の boxrow にしか数字Xは入りません。
その2つの boxrow に数字Xを何個割り当てるかに応じて、完成形は全部で4種類できあがります。
その4パターンについて解説していきます。
ここでは、次の2つに大別して説明しましょう。
- トリプレットXXXが片方の boxrow にまるごと入る場合。
- トリプレットXXXが2対1に分かれて boxrow に入る場合。
![](02_3.png)
まずは1つめ。
トリプレットXXXが片方の boxrow にまるごと入る場合。
これは2通りありますね。
- 【パターン1】2行目にXXXが入る。
- 【パターン2】3行目にXXXが入る。
この2通り。
chute を埋めていくと、それぞれ 図2-3 の通りになります。
さて。
ここで、数字の移動をちょっと確かめてみましょう。
前セクションの 図1-2 でやったヤツです。
![](02_4.png)
まずはパターン1。
XXXは斜め下の boxrow に移動していますね。
YYYもZZZも同様です。
次はパターン2。
どのトリプレットも斜め上の boxrow に移動しています。
このように、数字は斜めに移動するんですね。
正確に言うと、右1つ分&上下1つ分ずれた boxrow に数字が移動します。
この移動のことを、トラベル と呼ぶことにしましょう。
方向も含めて「上にトラベルする」「下にトラベルする」と言うことにします。
さて、上記により、トラベルの性質が1つ判明しました。
トリプレットが揃ってトラベルする場合、次のことが成り立つんです。
- トリプレットは3組とも同じ方向にトラベルする。
![](02_5.png)
次は2つめ。
トリプレットXXXが2対1に分かれて boxrow に入る場合。
これも2通りあります。
- 【パターン3】XXXが2個と1個に分かれて入る。
- 【パターン4】XXXが1個と2個に分かれて入る。
この2通り。
chute を埋めていくと、それぞれ 図2-5 の通りになります。
トリプレットが2対1に分かれるということで、ここでは2個の方を ペア、1個の方を シングル と呼ぶことにしましょう。
また、ペアとシングルを区別するために、シングルは文字を小さくしてみました。
chute を見てみると、どの boxrow にもペアとシングルが同居していますね。
![](02_6.png)
さて、この2通りについて、トリプレットの移動を追ってみましょう。
まずはパターン3。
ペアXXは下にトラベルし、シングルXは上にトラベルしていますね。
YYYもZZZも同様です。
次はパターン4。
ペアは上にトラベルし、シングルは下にトラベルしています。
というわけで、トラベルの性質がもうひとつ判明しました。
ペアとシングルに別れてトラベルする場合、次が成り立つんです。
- ペアは3組とも同じ方向にトラベルする。
- シングルは3つとも同じ方向にトラベルする。
- ただし、ペアとシングルではトラベル方向が上下逆である。
この「上下逆である」は密かに重要な性質です。
なので、特に頭に入れておきましょう😊
![](02_7.png)
図2-7、具体的な盤面で説明しましょう。
上段の floor を見ると、数字5と7が一緒にトラベルしてますね。
この5, 7がペアです。
そして、数字2は単独でトラベルしていますね。
これがシングルです。
ペアとは逆方向にトラベルしていることにも注目です。
下段 floor では数字1, 4, 8がずっと一緒ですね。
3個そろって上にトラベルしています。
![](02_8.png)
縦長の chute(つまり tower)についても同様です。
サラッと説明しましょう。
トリプレットが揃ってトラベルする場合、
- トリプレットは3組とも同じ方向にトラベルする。
ペアとシングルに分かれてトラベルする場合、
- ペアは3組とも同じ方向にトラベルする。
- シングルは3つとも同じ方向にトラベルする。
- ただし、ペアとシングルではトラベル方向が左右逆である。
tower におけるトラベル方向は「左右」であることに注意してください。
さて、トラベルについて解説しましたが、いかがでしょうか?
なんだかややこしくてホントすんません😓
でも、このトラベルの性質は重要になるので、なんとか頑張って理解していってください😊
3.トラベルはこんな感じではたらく
前セクションでは、トラベルの概要を説明しました。
今度は、実際の盤面でトラベルを見てみます。
chute 内部でトラベルがどういうふうに機能するのかを解説します。
![](03_1.png)
図3-1 で説明していきましょう。
初期状態から少しだけ手が進んだところです。
中段の floor(黄色)が少し埋まっていますね。
この floor に対してトラベルを考察してみます。
![](03_2.png)
まず、3つの黄色 boxrow(図3-2)を見てみましょう。
ひとつは526、ひとつは692。
数字2と6が2部屋に同居していますね。
この時点で、2と6が「ペア」を組んでいることがわかります。
- 中段 floor において数字2, 6はペアを組み、上にトラベルする。
ペアがいるということは、当然、シングルもいるわけです。
ペア2, 6と boxrow に同居している数字、これがシングルです。
5と9ですね。
ちなみに、数字5は下にトラベルしています。
これは、前セクションで述べたこの性質の通りですね。
- ペアは3組とも同じ方向にトラベルする。
- シングルは3つとも同じ方向にトラベルする。
- ただし、ペアとシングルではトラベル方向が上下逆である。
![](03_3.png)
さぁ、5と9がシングルだとわかりました。
それを踏まえて、今度は緑色 boxrow(図3-3)を見てみましょう。
中段 floor にはペアとシングルの両方がいます。
だから、この boxrow にもペアとシングルが同居しています。
数字5はシングルでした。
じゃぁ、残りの1と8は……?
そうです。ペアなんです。
ペア2組目の誕生です!
数字1と8について、これが成り立ちます。
- 中段 floor において数字1, 8はペアを組み、上にトラベルする。
あ、図3-3 では既に数字1が上にトラベルしてましたね。
ペアの片鱗が見えてた😓
![](03_4.png)
まだペアかシングルか判明していない数字は3, 4, 7の3つ。
ここで、左側ブロックの数字4に注目しましょう。
あと、中央ブロック(黄色)も。
中央ブロックは3マス空いてますね。
そのどこかに数字4が入ることになりますが……。
あれ?
どこに入ろうとも、数字4は必ず下にトラベルすることになりますね。
なんと、数字4はシングルだと判明しました!
なぜなら、シングルである数字5とトラベル方向が同じだからです。
そうなると、残った2つの数字3, 7は3組目のペアになるんですね。
![](03_5.png)
以上のことから、中段 floor では数字達はこういうトラベルをするはずです。
- 【ペア】2と6, 1と8, 3と7の3組。上にトラベルする。
- 【シングル】4, 5, 9の3個。下にトラベルする。
じゃぁ、このナンプレを解いてみましょう。
果たして、上記の通りになるかな……?
完成図は 図3-5 です。
おぉ、まさに上記の通りにトラベルしてますね!
盤面の大半が埋まってくると、他の floor や tower に対してもトラベル内容が詳しく判明するようになります。
そして、そのトラベルに基づいて数字が埋まりやすくなったりするんです。
4.実際に解いてみよう!
今度は、トラベルの性質を使って実際に解いてみます。
原案はフォーラムサイト『The New Sudoku Players' Forum』の Follow the numbers というトピックです。
そのトピックの投稿者が披露した方法を基にしています。
「へぇ〜こういう解き方もあるんだなぁ〜」と感じていただければ幸いです。
![](04_1.png)
では、解説を始めましょう!
図4-1 の盤面で解説していきます。
ナンプレを解く前に、盤面の右側と下側にスペースを設けます。
右側スペースには、各 floor に対してメモ欄を2つ用意しておきます。
これは、トラベル方向で数字を分類するための物です。
赤色は「上にトラベル」、青色は「下にトラベル」です。
同様に、各 tower の下側にもメモ欄を2つ用意します。
緑色は「左にトラベル」、黄色は「右にトラベル」を表します。
さぁ、これで準備OK!
![](04_2.png)
まず、既にトラベル方向がわかっている数字をメモしましょう。
各 chute を見て2個以上入っている数字があれば、その数字のトラベル方向がわかります。
メモは 図4-2 のようになりました。
さぁ、この時点で注目すべきところが1カ所できました。
それはどこでしょう?
下段の floor です。
赤色欄には「4」、青色欄には「37」がありますね。
ここで、セクション2で説明したトラベルの性質がものすごく効いてくるんです。
![](04_3.png)
ペアとシングルに関するトラベル、性質はこうでしたね。
floor 内部ではこれが成り立ちます。
- ペアは3組とも同じ方向にトラベルする。
- シングルは3つとも同じ方向にトラベルする。
- ただし、ペアとシングルではトラベル方向が上下逆である。
数字3, 7は一緒にトラベルしている。
そして、数字4は数字3, 7とはトラベル方向が違う。
というわけで、こんなことが言えるんです。
- 下段 floor において、数字3, 7はペアである。そして数字4はシングルである。
さらに!
数字4がシングルだということは、黄色 boxrow のおかげで「数字9はペアである」ということもわかるのです。
どこの誰かは知らないけれど、9には相思相愛の相方がいる。
![](04_4.png)
実は、数字9の相方はすぐにわかります。数字1です。
ヨコ列とヒント数字1を見ると、すぐにわかります。
さて、数字1と9がペアになりました。
どのペアも同じ方向にトラベルするということを考えると、「37」が書かれている青色欄に「19」と書くことができますね。
ペア1, 9は下にトラベルすることがわかった。
これは何を意味するのか?
こういうことなんです。
- 数字1も9も黄色 boxrow にしか入らない。
それを踏まえると…… あっ、なんか左下ブロックに何かありそう!
左下ブロックでは、数字9は黄色マスにしか入らない。
それを踏まえると、なんと9の入るマスが確定しちゃいました!
ついでに、相方の1も確定します。
いや〜すごいですね!
メモ欄だけで、ここまでわかっちゃったよ。
![](04_5.png)
左下ブロックに数字9が入ったから、左上ブロックにも自動的に9が決まりますね。
今度は左端 tower の数字9、黄色 boxcol に注目してみましょう。
さて、ここでクイズです。
左端 tower の数字9はペアでしょうか?
それともシングルでしょうか?
正解は「シングル」です。
なぜでしょう?
それは、boxcol に同居している数字がすべてバラバラだからです。
2, 3, 7, 4ですもんね。同じ数字が一つもない。
ペアと言うのであれば、数字9の相方がいるはずです。黄色 boxcol 内を数字9と一緒にトラベルしてくれる相方が。
しかし、一目瞭然ですね!
数字9はペアになり得ないのです。
これがわかると、さらにいろいろ判明しますね。
2と3, 4と7、2組のペアが同時に誕生しました!
そして、数字1はシングルだとわかります。数字9とトラベル方向が同じですもんね。
![](04_6.png)
あれからだいぶ進みました。
もぅ終盤です。
今、中央ブロックに数字9が判明したところです。
ここで、中段 floor を見てみましょう。
特に黄色 boxrow はどうなってるでしょう?
まったく同じトリプレットが入ってますね!
この floor では、トリプレットは3人揃ってトラベルします。
しかも、左側ブロックがすべて数字で埋まっているもんだから、トリプレットをなす数字もバッチリわかります。
「3, 6, 7」「2, 9, 4」「8, 5, 1」の3組ですね。
トリプレットが揃ってトラベルする場合、性質はこうでした。
- トリプレットは3組とも同じ方向にトラベルする。
みんな下へトラベルするんですね。
![](04_7.png)
さぁ、あとはゴールまでまっしぐら!
完成図は 図4-7 です。
ついでにメモ欄も完成させておきましょう😊
chute という小さな世界で数字たちがトラベルをする。
ある所では数字たちはペアになって仲睦まじく旅をし、ある所ではシングルで気ままに旅をする。
たまぁにワイワイと3人旅。
「旅」というワードで見ると、この解法の表現に面白さを感じます。
数字たちがわちゃわちゃ旅をする様がなんだか可愛らしい。
このページでは「トラベル」というワードを使いました。
これは、Follow the numbers や Traveling Pairs and Triples など元記事で「travel」という単語が使われていたからです。
私は英語に疎いのでなぜトピックの投稿者が「travel」と表現したのかはわかりませんが、投稿者が「旅」になぞらえていたのならその発想は面白いなぁと。
そこで、私も倣って「トラベル」にしてみた次第です。
……とか言って、単に「移動する」とかいう意味だったりしてな😅
ドヤ顔で投稿者の発想まで語っておきながら、違ってたらすっごくダサいよな😅
今のは聞かなかったことにしてください😅
内緒だよ! 内緒!
まぁそれはおいといて、視点の面白い理論ですよね。
chute や boxrow などの用語もさることながら、3×9や1×3を視点にナンプレを見るんですもの。
見たことない物ばかりが目に飛び込んでくる。
1×9や3×3なら山ほど目にしたけれど、それ以外にも立派な理論はあるもんなんですね。
やっぱりナンプレは奥が深いわ。
参考・参照
- The New Sudoku Players' Forum, 『Follow the numbers』,
http://forum.enjoysudoku.com/follow-the-numbers-t768.html - The New Sudoku Players' Forum, 『Traveling Pairs and Triples』,
http://forum.enjoysudoku.com/traveling-pairs-and-triples-t3522.html
更新履歴
- 2022. 2. 5.
- 新規公開。
- 2023. 3.31.
- ページ冒頭に難易度表記を追加。